首都圏に数校しかない私立単独男子校の一つが、保善高校(東京都新宿区)だ。隣は広大な戸山公園という恵まれた立地にある。大学進学は中堅上位の私立大が中心だが、国公立、難関私立の合格を目指す少人数制の特別進学クラスを2クラス設置。特進クラス独自の教科として、17年から「未来考動(こうどう)塾」を開講した。

 プログラムの作成に携わった特進部長の山田優教諭は目的を次のように話す。

「ただ勉強させるだけでなく知的好奇心を刺激し、思考力の基礎を作ることが狙いです」

 授業は、自分で問いを設定し、仮説を立てて検証、発表するという流れに沿って進められる。佐々木空也さんは、宇宙エレベーターで宇宙に到達するためにはどれだけ酸素ボンベが必要か研究し、プレゼンコンテストで優秀賞を獲得した。

「計算が大変でしたが、好きなことをやっているので楽しかった。人前で話すのは苦手でしたが、自信がついた」と語る。

 新宿の環境問題についてプレゼンした佐藤匠さんは、「自分の考察を入れて結論を出すのは、初めての経験。このスキルは社会に出てからも役に立つと思う」と話す。

 この未来考動塾を導入してから、生徒が他の教科でも積極的に発言したり、記述力がついたりと、効果が表れ始めているという。いずれ全クラスへの展開も検討している。

「異性の目を意識せず、目標に向かってまっしぐらに行動する3年間は貴重な時間。思考力を身につけて、さらに充実した高校生活をおくってほしい」(関口榮司校長)

(ライター・柿崎明子)

AERA 2018年7月16日号