「彼らは障害があることによって経験が圧倒的に少ない。いろんな経験を積むことで、障害はなくならないけど障壁は低くなる。仲間との活動やどんどん地域に出ていくことを通して、地域社会で生きていく力をつけてほしい」(田中さん)

 学校でもない家庭でもない第三の居場所として障害児の発達支援に欠かせない放課後デイ。12年度には2540事業所だったが、昨年4月には1万以上と4倍になった。

 利用者は今年3月時点で、約17万8千人。1回の利用料8千~1万円のうち9割が公費で1割が利用者負担。上限は一般世帯で月額4600円だ。

 厚生労働省の14年障害福祉サービス等経営実態調査によると、収入に占める利益の割合を示す「収支差率」は放課後デイの事業所平均が14.5%で、全平均の9.6%を大幅に上回った。基準より多くの職員を配置して、手厚く支援する事業所はこれほどの利益は出ないが、利益の多さから、さまざまな事業者が参入。ネット上には「3カ所開設すれば年商3億」「障害のことを全く知らなくても開けます」などの文言も躍った。その結果、子どもを集めてアニメを見せるだけといった適切な支援を行わない施設が増え、事故も急増した。

 国は一定の質を担保するために、15年4月には「放課後等デイサービスガイドライン」を策定。昨年4月には開設基準を見直した。事業所職員について、管理責任者は障害者や児童の支援経験3年以上を必須化し、配置の最低基準の職員(子ども10人までは2人以上)の半数以上を児童指導員か保育士とする基準を設けた。

 だが、今年4月の報酬改定が問題だった。厚労省は重度の障害児を受け入れた場合は報酬を手厚くするとし、国の定める指標に基づいて市町村が子どもたちを判定、「重度」の子が半数以上いる事業所は「区分1」、いない事業所は「区分2」とされるようになった。基本の報酬は区分1では3~4%の減額、区分2では10~12%の減額となる。

次のページ