病気と闘いながら毎日を精一杯生きる子どもたち。「愛してくれる人がいれば幸せ」と前向きに語る姿が印象的だ。この仏映画「子どもが教えてくれたこと」を撮ったのは、自身の娘2人を病気で亡くした女性だ。
フランスで23万人を動員したドキュメンタリー映画「子どもが教えてくれたこと」。主人公は5~9歳の5人の子どもたちだ。がんや心臓病などの深刻な病気を患う彼らが、どんな苦境にあっても、家族や親友と愛すべき日常を生きている姿を丁寧に追っている。
監督を務めたフランスのジャーナリスト、アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン(44)は、大人からの視点ではなく、子どもたちの目線に立つことにこだわったという。
そのため映画はナレーションもなく、子どもたち自身の語りで進行する。病気について説明するのもすべて子ども自身だ。わずか5歳の男の子、カミーユも「赤ちゃんだったときにママが全部説明してくれたよ」と、自身が患う神経芽腫について語る。テュデュアル(8)は腫瘍摘出手術が原因で目の色が左右違うことを説明する。そこには、自ら舵をとって自分自身の人生を生きようとする彼らの姿がある。
深刻な病気を抱えていると、病気が人生のすべてを覆ってしまうような気がするが、映画の中の子どもたちを見ていると、病気であることは彼らの一部でしかないことに気づかされる。
動脈性肺高血圧症のため常にポンプを背負う女の子、アンブル(9)はお芝居が大好き。ちょっと走っただけでも息切れするが、友達とのバドミントンも楽しみで、弾ける笑顔を見せる。平日は病院で過ごすシャルル(8)はいつだって親友と一緒。腎不全のイマド(7)は消防車に目を輝かせる。スクリーンに映し出されているのは、どこにでもいる子どもたちだ。
実はアンヌ自身、娘2人を病気で亡くしている。撮影期間が次女の闘病と重なっていたが、撮影で病気の子や親たちと接することで、「私だけじゃない」と力をもらったという。アンブルの「悩みごとなんてたいしたことはない。私を愛してくれる人がいれば幸せだわ」という言葉にも救われた。アンヌは言う。