「当時、私の娘は歩けないし話をすることもできなかったけど、少なくとも娘は、娘を愛する人たちに囲まれているんだと再確認することができました」
腎不全で腹膜透析をしているイマドが、腎移植を検討している際に、父にこんなことを言うシーンがある。
「(移植手術をすれば)病院にも来なくなって、パパを疲れさせなくて済むようになるね」
アンヌは語る。
「子どもはみな自己中心的なところがあるけど、病気の子どもたちは自分が苦しい思いをしているから、共感するキャパシティーがとても広いんです」
苦しいからこそ他人を思いやれる。その尊さに心が震える。だが、そんな優しく強い彼らにとって、つらいのは周囲の目だ。
アンヌによると、表皮水疱症のため体を包帯で覆っているシャルルは、一番つらいのは痛みやかゆさではなく、「他の人の視線」と語っていたという。それが、彼を「病気の子」ではなく一人の少年として撮影していくうちに、周囲にどう見られるかを怖がることはなくなった。アンヌは言う。
「病気や障害によって社会に自分の居場所がなくなるような思いになることが一番つらいんです。社会の側が見方を変えていかなければならない。それは私たち大人に責任があります」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2018年7月9日号