「プーチン大統領好きのトランプが演説で、(シリア政府を支援する)ロシアをわざわざ非難したのにも驚いた。珍しく正しいことを言っていると、むしろ耳をうたぐった」(ポープさん)

 軍事攻撃の根拠となった4月7日のシリア政府軍による化学兵器使用の証拠は、示されていない。しかし、米国民には、「米国の正義」を主張して軍事行動を決断する大統領を、強く支持する傾向がある。トランプ大統領が化学兵器使用を理由にシリアを攻撃したのは今回が2回目だ。最初は昨年4月で、ミサイル59発を発射。選挙公約の目玉だった医療保険制度改革(オバマケア)撤廃の勝負法案でつまずくなど内政が行き詰まり、支持率がギャラップ社の調査で初めて30%台まで落ちた時だった。それがシリア攻撃後、40%台に回復した。

 同時に、軍事行動が長期化すると支持率が急落するというリスクもある。トランプ大統領は2回のシリア攻撃を、ともに1日限りにとどめている。「政策がない」「何も考えていない」などと単純視されがちなトランプ大統領だが、シリア攻撃の背景には、国民心理の分析を踏まえた戦略が透けて見える。こうした戦略の先にトランプ大統領が見据えているのは、今年11月の中間選挙であり、それ以上に20年11月の大統領選挙における自身の再選だ。

●過度のスキャンダルは逆に悪い大統領の免罪符

 政権発足5カ月後の昨年6月28日、トランプ大統領は一族が経営するワシントンのトランプ・インターナショナル・ホテルで、次の大統領選に向けた選挙資金集会を開いた。CNBC放送によると、集めた資金は推計1千万ドル。CNN放送によると、オバマ、ブッシュ(子)両大統領の資金集めより2年以上も早い「再選キャンペーン」の開始で、自身の資金力と再選への意欲を見せつけた形となった。

 ただ、初当選後、半年も経たないうちの再選活動の開始や、一族の経営するホテルでの選挙資金集めは常識では理解できない。大統領の側近に長女イバンカ夫妻を登用するのもご法度だし、個人攻撃あり暴言ありのツイッターも極めて異常だ。大統領選挙期間中から次々と出てきた女性問題など、政治生命にかかわるような問題が相次いで発覚しても、トランプ大統領の場合は追い込まれない。まるで特別ルールが存在しているかのようだ。

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