この状態について、ジャーナリストのサム・ボーン氏は、トランプ政権を模して書いたとみられる自著の小説『To Kill the President』中で、こう批判している。

「『一人の人間の死は悲劇だが、数百万人の死は統計上の数字でしかない』とソ連のスターリンが言ったように、いい大統領はわずか一つのスキャンダルで崩壊するが、過度のスキャンダルは逆に悪い大統領の免罪符にもなる」

 それでも批判をやめない人やメディアには、ツイッターでの大量発信を通じ、個人攻撃をしたり、フェイクニュースだと反論したりすることで、問題点をあやふやにしてしまう。自身の主張を世間にあふれさせ、同時に、良くも悪くも注目を一手に集中させる。政敵の民主党にも、エリザベス・ウォーレン上院議員や人気テレビ司会者のオプラ・ウィンフリー氏ら次期大統領選での立候補が期待される人物がいるのに、トランプ大統領の露出度の激しさの陰に隠れ注目度が埋没してしまう。

●プアホワイトを意識した究極の劇場型政治

「結局はトランプのやり方に誰もが引き込まれている。そもそもメディアや前政権など一部のエリートが支配する既成体制への不信が、トランプ政権を誕生させたことを忘れてはいけない」

 そう話すのは、ノースカロライナ州の会社員でイタリア系米国人のエディー・モンカーヨさん(45)。口癖は「米国が弱っている」。既成体制や常識に縛られないトランプ大統領だからこそ、強い米国をつくれると期待する。

 特定の人たちを敵視しながら、その対極にある人たちからは熱狂的な支持を得るトランプ流は、究極の劇場型政治とも言える。仕事がないと嘆くプアホワイトを意識して、自国の輸出増を中国などに強引に認めさせようとする。移民に米社会が侵食されているとの主張があれば、国境に壁をつくろうとする。北朝鮮情勢の危機感をあおって日韓に武器を大量購入させたり、軍事費を歴史的規模で増大させたりすれば、軍事産業や軍関係者からは喜ばれる。最大の支援団体である全米ライフル協会幹部とは頻繁に会い、揺るぎない蜜月関係を築くのに一生懸命だ。

次のページ