森友学園を巡る公文書の改竄、口裏合わせ。さらには現役次官がセクハラ疑惑で辞任した。舞台は「官僚の中の官僚」が集まる財務省――。この問題の背景には安倍政権もとで財務省が「冷遇」されたことも指摘される。
「(私や妻が)もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣も国会議員もやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい」
17年2月17日、安倍晋三首相のこの答弁を機に、森友学園問題が政局化した。安倍首相に質問した福島伸享前衆院議員(当時民進党)は、こう振り返った。
「私の質問は、安倍昭恵夫人が森友学園の小学校の名誉校長に就任したことを安倍総理が知っているか確認するものでした。保守の名を借りた保守ビジネスに安倍総理が利用されていないか。そういう思いで質問したのですが、ムキになって反論してきたので、逆に後ろめたいことがあるのかと驚きました」
ただ、安倍首相、そして昭恵夫人の関与が問われる最大の「マル政案件」(政治案件)は、財務省の「取引」材料とも言えた。財務省OBの元国会議員は、「安倍総理が消費増税に反対なことは総理になる前から知っていた。だけど消費税はやってもらわないと困るから、補正予算で大盤振る舞いをするなど、官邸に花を持たせてきた。来年には10%への増税も控えている。森友学園問題は政府に貸しを作る大きな取引だったのだろう」
「官僚の中の官僚」と呼ばれる財務官僚だが、安倍政権下ではその立ち位置も変わっていた。
「財務省から出向する首相秘書官が筆頭格とされ、財務省が政局情報をつかんできた。ところが第2次安倍内閣以降、今井尚哉秘書官を筆頭とした経済産業省主導政権で財務省は冷遇されている」(霞が関の幹部官僚)
人事権も握られた。安倍内閣は14年、内閣人事局を新設。それまでは各省庁が局長級以上約200人の人事案を作成し、官邸の人事検討会議で決めていたが、部長・審議官級以上の約600人に対象を拡大。各省庁の人事評価をもとに、まずは内閣人事局が幹部候補者名簿を作成する。次に各省庁が人事案をまとめ、最終的に内閣人事局と協議のうえ決定する。初代局長に官僚トップの杉田和博・現内閣官房副長官が就くと見られていたが、安倍首相の腹心の加藤勝信・現厚生労働相が指名され、政治主導を強烈に印象づけた。