「たとえば財務省なら、課長補佐時代に主計局の主査をやる、それも本流の公共事業や農林、厚生労働を担当できるかどうか。あとは人間力。人望があるかどうか。佐川は怖い上司を相撲の番付ふうに模倣した財務省内の『恐竜番付』で、同期で最も早く幕内入りするなど、部下からの人望が薄かった。官邸が人事に介入する今は、官邸の覚えがいいかどうかも重要だ」(同前)

 前出の元財務官僚は3月27日の佐川氏の証人喚問後、財務省の現職幹部職員と食事をする機会があった。彼らはこう口をそろえたという。

「かわいそうだよね」

 元財務官僚は続ける。

「組織を守るのが彼の仕事だった。官僚なら誰があそこにいても同じ答弁をする。ただ、その役が不幸にも佐川さんの時期に回ってきただけ。それはみんな理解しているから、OBで『佐川さんのいい活躍先を探していこう』という話にもなった」

 第二の人生に向かうのは佐川氏だけではない。福田淳一・前事務次官がセクハラ疑惑で辞任した。福田氏は佐川氏と同期入省で、早くから次官候補となったエリート官僚だが、これで人生計画も狂っただろう。

「豪快な性格で酒の席では踏み外すこともあるが、愛嬌のうちだった。昭和の感覚が抜けなかったのかも」(財務省関係者)

 本当にかわいそうなのは誰なのか。佐川氏は証人喚問で自殺した男性について問われ、

「本当に心よりご冥福を祈りたいと思っております」

 そして、こう付け加えた。

「ただ、私はその方が亡くなられた経緯等々については一切承知しておりません」

 最後まで官邸の下僕を貫いた。

(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年4月30日-5月7日合併号より抜粋