官房副長官として8年7カ月にわたり5人の首相を支えた元厚生官僚の古川貞二郎さん(83)は霞が関の情報誌「時評」(14年6月号)で内閣人事局への懸念をこう語っている。

「最大の問題は、官僚に対する政治家の恣意的な人事が行われるのではないか、そのおそれが高いという点です。(中略)政治家の覚えがめでたい人間ばかりが重用され、また政権が変わるたびに幹部が入れ替わるような事態になったら、政策実行の一貫性・永続性が失われ、立法そのものが無意味なものになるかもしれません。一歩間違えばそうした方向に進みかねない、今回の改正はそんな危機をはらんだ制度だと私は思います」

 現在の心境をこう話した。

「私の懸念したことが、現実的になっているように感じる」

 財務省人事にも異変があった。

「第1次安倍政権で秘書官を務め、辞任後の安倍氏も支えた田中一穂が15年に次官に。同期から3人目の次官という前例のない人事だった」(財務省関係者)

 当時主税局長だった佐藤慎一元次官が官邸より先に公明党へ軽減税率の根回しをしたことが官邸の逆鱗に触れ、「次官就任が飛ばされる」と、うわさが流れたこともあった。

 官邸に逆らえば報復人事に遭うからと、財務官僚も「官邸の下僕」と化したのか。

「官僚は出世がすべて」

 元経産官僚の古賀茂明さんはそう話す。官僚人生の最終ポストで第二の人生は大きく変わる。

「報酬だけではなく、秘書や車など、待遇が違う。経産省の場合、次官なら銀行や保険会社の顧問。たいして仕事もなく、年収も3千万~4千万円は保証され、交際費も青天井。一方、課長級で終われば、せいぜい業界団体の専務理事程度だろう」

 霞が関の出世レースで勝ち抜く人はどのような人なのか。先の財務省関係者がこう話す。

「人を気持ちよくさせることです。忖度して、ややこしい問題をあげてこない部下。これが一番評価されます。逆に嫌われるのは、十分な詰めもせず、ただ問題を持ち込んで、『困りました、どうしましょう』というタイプ」

 次官まで上り詰めるとなれば、運と人間力も必要となる。

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