なぜ中高生が、大学レベルの研究をすることができるのか。16年度の卒業生で、現在は東京大学教養学部に通う須田隆太朗さん(19)は、こう話す。

「社会もまだ答えを見つけていないテーマに取り組む意義を、先生方が熱心に説いてくれた影響が大きかった。最初はわからないことだらけでも、仲間と分担して文献を調べて教え合ったり、研究を進めたりしているうちにワクワクしてきて、もっと社会に役立つ研究をしたいと思うようになりました」

 09年からスタートしたキャリア教育を一から受けた生徒が高3になった14年ごろから、同校の進学実績は飛躍的な向上を見せ始める。女子校時代はほぼゼロだった国公立大学に2桁の合格者を出すようになり、早慶上理の難関私立の合格者も3桁が定着した。

 17年度は国公立大学に67人、早慶上理に212人のほか、スタンフォード大学やバークリー音楽大学といった、多彩な分野の海外名門大学にも多くの合格者が輩出している。大学合格実績だけにとらわれない教育が、結果として進学実績を大きく伸ばした格好だ。

 親がうるさく言わなくても自学自習の習慣と職業観を身につけ、有名大学へ導いてくれる学校があるなら、ぜひわが子を入学させたいものだ。しかし人気校ほど、中学受験には高いハードルが立ちはだかる。

 大学通信の安田さんは、学校選びについてこうアドバイスする。

「大学合格実績を伸ばす学校は志願者も増えるので、偏差値が上昇して狭き門となりがちです。通常、改革を始めてから結果が出て人気が上昇するまでに6年以上はかかります。なので、その途上にある学校なら入りやすい。説明会などにこまめに足を運び、改革に取り組む“原石”のような学校を探し出すのもひとつの手です」

(ライター・森田悦子)

AERA 2018年4月23日号より抜粋