広尾学園 中学校・高等学校/大学レベルの実験機器がそろうサイエンスラボ。国内外の大学や研究機関とも連携し、盛んな研究活動が行われる(撮影/岡田晃奈)
広尾学園 中学校・高等学校/大学レベルの実験機器がそろうサイエンスラボ。国内外の大学や研究機関とも連携し、盛んな研究活動が行われる(撮影/岡田晃奈)

 こんな学校に子どもを入れたい。そう思う学校には特徴がある。改革を進める中高一貫校では、進学実績だけでなく、将来につながる力が身につく。

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07年に共学化した広尾学園中学校・高等学校(旧順心女子学園、港区)は、一般的な中高生の枠を超えたユニークな教育で進学実績を伸ばしている。

 1990年代には1800人近くいた生徒数が、03年には400人台まで激減し、廃校の危機に瀕したことから、学校改革に乗り出した。当時の様子を金子暁副校長はこう振り返る。

「当初は進学に強い他校の指導方法を参考に同様のしくみを取り入れ、有名大学への合格実績を伸ばすことに注力していました。すると若手教員から疑問の声があがったのです」

 それは「他校を後追いし、数字を追いかけるだけでいいのか。もっと本質的な教育をすべきだ」という声だったという。こうした意見をもとに、大学進学の先にある生徒の将来の夢を育もうと始めたのが、キャリア教育だ。

 中高生のキャリア教育というと、職業人による出前授業や地元の商店や企業などでの職業体験といった取り組みが一般的だろう。しかし同校では「本物」と「最先端」に触れることにこだわり、各界の第一線にいる専門家による講演や体験の機会を年25回ほど設けている。

 13年にはグーグルのエリック・シュミット会長(当時)が来校し、同社のビジネスや将来求められる人物像などについて生徒と活発な意見を交わした。まさに生徒にとって最先端に触れる貴重な機会だ。

「中高生向けに内容をわかりやすくしないようゲストにお願いしています。たとえすべてを理解できなくても、さまざまな世界に触れてもらうことが重要なのです」(金子副校長)

 医学部や理科系への進学を目指す「医進・サイエンスコース」の生徒は大学レベルの研究に取り組んでおり、日本数学会や日本植物生理学会など高校生向けではない一般の学会で生徒が成果を発表した実績もある。検体の画像から病気を診断し、治療方針までを現役の医師の前でプレゼンする講座もあり、優秀なプレゼンをした生徒は実際の手術に立ち会うことができる。

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