北極海の海氷分布図の比較(1979年と2017年)[AERA 2018年4月23日号より]
北極海の海氷分布図の比較(1979年と2017年)[AERA 2018年4月23日号より]
温暖化が突出している北極圏(AERA 2018年4月23日号より)
温暖化が突出している北極圏(AERA 2018年4月23日号より)
米航空宇宙局がグリーンランド上空から観測した海氷。冬の北極海の海氷面積としては史上最小を記録した昨年3月に撮影された(写真:gettyimages)
米航空宇宙局がグリーンランド上空から観測した海氷。冬の北極海の海氷面積としては史上最小を記録した昨年3月に撮影された(写真:gettyimages)

 地球温暖化の影響を最も受けるのは、北極であることをご存知だろうか? 地球平均の2倍以上の速さで進行しており、このままでは北極の海氷が消失する可能性もあるという。この問題は日本も決して無関係ではない。

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 今春も桜が日本を魅了した。

 新年度や新学期が始まる時期、日常生活の大きな変化への希望や不安を優しく包んでくれる満開のソメイヨシノは、日本全国どこにいても、見ている者の心を和ませてくれる。なぜだか分からないのに、ウキウキとした気持ちにさせてくれるのは、日本人にとって特別な存在であり続ける桜の魔法だ。

 しかし、今年は、その桜の季節が予期せぬ異変に襲われた。全国の観測地点で例外なく開花や満開の日が記録的に早まった。気象庁によれば、満開日が平年と比べ、福島や富山、高知などで11日、東京や大阪、松江などで10日、京都や徳島、長崎などで8日、名古屋や広島、宮崎などで7日と、1週間以上も前倒しとなった都市が、東西に関係なく列島のあちこちで出た。その多くが「観測史上最速」の満開日だったことが、今春の異変ぶりを物語っている。

 ただ、開花が早くなる傾向は今年に始まったことではない。全国平均で見れば、過去50年間で約5日早まっているとの分析もある。確かに筆者が小中学生だった約35年前は、入学式の時期にすでに葉桜だったことは記憶にない。このままいくと、桜は年度末や卒業式に満開を迎える「お別れの花」になってしまう可能性がある。そして、開花時期の早まる一因となっているのが、地球温暖化なのだ。

「異常気象」といった言葉をよく耳にするようになった昨今、地球温暖化が原因とみられる現象は、日本でも顕著になっている。気象庁の発表やマスコミ報道でも、「これまでに経験したことがないような」といった警告が伴う集中豪雨や巨大台風、竜巻、寒波や猛暑など、日本の気候に関する従来の常識を一気に覆すような気象現象が次々と起きている。

 もちろん、異常気象は日本に限ったことではなく、世界各地で共通してみられる深刻な問題だ。そして、その温暖化の影響を地球上で最も強く受けているのが、1年を通じて多くの時期が氷雪に覆われている極寒の地、北極圏であることは、一般的にあまり知られていない。

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