気温上昇の影響で、北極海を覆う海氷が解け、海氷範囲も著しく減少した。気象庁の観測データを見ると、北極海の海氷が最も小さくなる夏の時期(8月)の比較で、1979年と2017年では、その面積が大きく減少していることが一目瞭然だ。面積の減少に加え、さらに深刻なのは、毎年薄くなっていく氷の厚さだ。気象庁の図で示されている密接度は、青色が濃いほど、氷に覆われている面積よりも海水面が多いことを示す。逆に白ければ、海水面が少なく、氷に閉ざされていることを示す。

 海氷面積の減少は、夏に限ったことではない。米国立雪氷データセンターなどの分析によると、北極海の海氷が最も大きくなる冬の時期(3月)の海氷面積も減少が著しく、17年が観測史上最小で、今年が観測史上2番目に小さかった。

「何年も残っている海氷は厚く、非常に密度がある。それが近年は温暖化によって、解けてはまた固まるということが繰り返されるため、若い氷のほうが多くなった。6割くらいが1年ものの氷だと言われている。海氷の面積も小さくなっているし、厚さも薄く、密度もなくなってきている」(本田氏)

 北極圏で進行する温暖化の影響は、実は、遠く離れた日本も無関係ではない。大陸の上にある氷雪が解けて海に流れ込むことで海面上昇が起こるとされる南極と違い、北極圏の多くは海が凍っているだけなので、グリーンランドといった一部の陸地からの流れ込みを除けば、海氷が解けても海水の体積が増えることはなく、深刻な海面上昇にはつながらない。

 むしろ、本田氏によると、「温暖化により北極の氷がなくなることで、海面の温度が上昇し、それにより、北極の高気圧が勢力を強めることで、偏西風の蛇行が強くなる。そのため、日本でも夏は高気圧が停滞しやすく猛暑に、冬は北極の寒気が南下しやすくなり厳寒、豪雪になる傾向がある。そうしたことが、最近の研究で分かってきている」。今まさに日本で観測されている異常な気象現象の背景には、北極圏で進む深刻な温暖化が深く関わっているのだ。(編集部・山本大輔)

AERA 2018年4月23日号より抜粋