「社会保険庁時代は正規職員が6割でしたが、年金機構ではそれが逆転し、6割が有期雇用の非正規職員です。非正規職員は1年契約を4回更新し、5年で雇い止めになる。仕事で触れている個人情報は正規も非正規も違いはなく、雇い止めによる情報流出のリスクもある」

「機構の業務は個人情報の塊」(水島理事長)だ。日本年金機構法には「役職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする」(第25条)とあり、「退職時にも秘密厳守のサインをもらう」(日本年金機構広報部)とするが、

「例えば滞納者に督促状を出すような部署では、著名人や老舗の人気料理店が実は滞納しているなど、人に話したくなるような情報にも触れる。非正規職員は昇給も退職手当もなく、給料は最低賃金程度。それも5年で放り出され、職場への不満が思わぬ形で出る可能性もある」(前出の職員)

 13年の労働契約法の改正で、この4月から有期労働契約が5年を超えれば、無期契約に転換できるルールが適用されている。しかし、日本年金機構では3月末に雇用契約期間が5年に達した非正規職員が1356人いるが、無期転換になったのは235人に過ぎない。

 加藤勝信厚生労働相は参院予算委員会で、外部委託のあり方などについて、こう述べた。

「外部の専門家も入った調査組織を立ち上げ、徹底的に見直しをしていく」(3月26日)

 信頼回復のためには、外部だけではなく、内部体制の見直しも必要だ。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年4月9日号