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“遺伝子を改変”でがん治療する「CAR-T」 転移したがんにも効果期待

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山本大輔AERA#がん

肝臓用のウイルスベクターを作る自治医科大学の大森司教授(撮影/高井正彦)

肝臓用のウイルスベクターを作る自治医科大学の大森司教授(撮影/高井正彦)

これは遺伝子治療やゲノム編集の道具を肝臓に運ぶカプセルのような役割を果たす。ほぼ毎週、作っているという。ピンク色の液体は培養液(撮影/高井正彦)

これは遺伝子治療やゲノム編集の道具を肝臓に運ぶカプセルのような役割を果たす。ほぼ毎週、作っているという。ピンク色の液体は培養液(撮影/高井正彦)

 がん治療で期待される治療技術がある。遺伝子治療、ゲノム編集だ。遺伝子治療では、人工的に作られた正常な遺伝子を体内に入れて、これが異常遺伝子の代わりとして働く。ゲノム編集は、自分のDNAの欠陥部分をスポット的に修復するイメージだ。現在はまだ研究段階だが、大きな期待が寄せられている。

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 では、実際にどんな研究が行われ、どのような治療効果が出ているのだろうか。

 遺伝子治療とゲノム編集の両方の技術を使った血友病治療の研究をしている自治医科大学医学部(栃木県下野市)の大森司教授の研究室を訪ねた。大森教授は、遺伝子治療とゲノム編集の両方の技術を並行して活用することで、より治療効果が期待できると話す。

 血友病とは、血液を固めるための凝固因子(肝臓で作られている)の遺伝子異常で、血が固まらないという出血性疾患だ。重症になると、凝固因子製剤を週に何度も注射する必要があるが、大森教授によると、

「負担が大きく、一生補充し続けるだけで治らない。根本的な治療が望まれる中、欧米の研究では、ここ1、2年で遺伝子治療がうまくいき始めている」

 凝固因子の正常遺伝子を外から入れると、「1回の投与で、出血しない期間が長く続くなどの治療効果があることが分かってきていて、患者さんの希望の光になっている」という。

 ゲノム編集ではキャス9(DNAの欠陥部分を標的として、自動的にハサミを入れて切断する機能がある酵素)などをデリバリーウイルスに入れて肝臓に運ぶが、遺伝子治療でも正常遺伝子をウイルスに入れて肝臓まで運ぶ。ウイルスに入れる中身が異なるだけでデリバリーの仕組みは一緒だ。大森教授は、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)と呼ばれるデリバリー技術を使って肝臓に届けている。ゲノム編集を遺伝性疾患の治療法として実用化するには、様々な臓器に道具をどうやって運ぶのかというデリバリー技術を「解決すべき問題の一つ」としており、その研究にも大森教授は力を入れている。

 がん治療でも、遺伝子を改変する技術は、すでに一部で実用化への動きが本格化している。

「CAR-T(カーティー)」と呼ばれる新たな細胞療法だ。

 T細胞と呼ばれる患者自身の免疫細胞を取り出して遺伝子を改変し、がんへの攻撃力を高めて体内に戻す。「T細胞に腫瘍(しゅよう)細胞を認識する遺伝子を導入するという点で、遺伝子治療(遺伝子細胞治療)と言える」と大森教授。同時にがん細胞には、T細胞による攻撃を妨害する仕組みがあり、これを受けたT細胞は攻撃を抑制するブレーキをきかせてしまう。「ブレーキをゲノム編集により破壊し、がんへの攻撃力を高めるというコンセプトが期待されている」とも説明した。


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