「当時はまさかと思って見ていたことが、次々現実になっていく。たびたび思い出して、ついリピートしてしまう」

 ライバル企業にハッキングされ、乗っ取られた大量の自社製ロボットが攻撃してくる「アイアンマン2」のストーリーも、もはや空想ではない。今どきの産業スパイは、黒手袋に懐中電灯でライバル企業の金庫に侵入したりしない。「ハッキングの手法を用いることが多い」(足立さん)のだという。

 大量のロボットを乗っ取って暴れさせるのも、今のハッカーが、一般家庭の電化製品を乗っ取って、対象のサーバーを攻撃させる手法に似ている。それも乗っ取るのが人型ロボットとなれば、ドアをぶち破ったり、人を殴ったり、ネットとつながっていないものへの攻撃もできてしまうのが、まずい。

 英国のヘンリー王子との婚約が話題の女優メーガン・マークルが出演して注目を集めている米ドラマ「SUITS/スーツ」にも、未来を言い当てたようなサイバー犯罪が出てくる。

「ハーバード出のエリート弁護士」を装う主人公の天才青年が、経歴詐称の発覚を恐れ、ハッカーに卒業者名簿などの改竄を依頼したりするのだ。それはさすがにバレるでしょ、とツッコミ含みで見ていた人も多いが、実はそうでもないらしい。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)は今年6月、改竄不可能な「ブロックチェーン」と呼ばれる技術を使ったデジタル修了証書の授与をスタート。ということは、今までは改竄可能だったということか?

 ほかに「ホワイトハウス・ダウン」や「007スカイフォール」などもぜひ。サイバー空間がなかった時代の名映画解説者、淀川長治(よどがわながはる)さんも言うだろう。こわいですね? サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ~。(ライター・福光恵)

AERA 2017年12月11日号