写真=情報通信研究機構(NICT)提供
写真=情報通信研究機構(NICT)提供

「サイバー」とかいう見えない世界が、自分たちの前に出現したのは、わずか20~30年前。そこで繰り広げられる犯罪には、サスペンスドラマみたいな氷の凶器も、断崖絶壁も、時刻表も出てこない。そんな不気味な新ジャンル。この先サイバー空間で、どんな事件が起こるのか、正確に予測できる人なんて、どこにもいないだろう。

 でも、人が想像できることは全部、現実になってもおかしくない。映画やドラマが描いた突拍子もないサイバー犯罪が、あっという間にあるある化した例も少なくない。

 まず、名作シリーズから。「ダイ・ハード4.0」だ。ご存じ「世界一、運の悪い男」マクレーン刑事が、4.0ではサイバーテロ組織と戦っていた。

 テロリストはハッカーの若者たちを雇い入れ、金融市場、交通システム、発電所などのシステムを攻撃して、都市機能の壊滅をもくろむ。一部作戦は実行されて、信号が停止するわ、停電が起きるわで、当然街は大混乱。政府までも機能不全に陥ってしまう。

「重要インフラを狙うのは相手に効果的にダメージを与えるサイバーテロ。今年、世界各地で発生しました」

『サイバー犯罪入門』の著者、足立照嘉さんはそう話す。大きな理由のひとつは、重要インフラ施設のシステムでも、すべてがフルオーダーメイドではなくなっていること。その手の施設の装置を制御するシステムの80%に、私たちが今日も使っているOS「ウィンドウズ」が使われているとの説もある。一般人のパソコンを狙うのと同じ感覚で、インフラ施設が攻撃できるようになっているという。

 1998年に全米を震撼させたハイテクサスペンス映画「エネミー・オブ・アメリカ」も、20年後の最新技術を駆使した「監視社会」を予見するような場面が満載なことで知られる。

 例えば、衛星の画像から、街を歩く人の個人情報を突き止めたり、電子タグを身につけさせて行動ログをチェックしたり。今じゃ、彼氏や夫の浮気を疑う女子たちだってやってるもの。

 この映画のファンで、10回は見たというデザイナーの男性(48)は言う。

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