都内在住のB子さん(27)は、今の心境を吐露する。

「ちゃんと死ねる気がしなくて」

 バイセクシュアル(両性愛者)で、1年半ほど前から1歳年下の女性とつきあいはじめた。彼女とはこのままずっと一緒に過ごしていきたいと思うが、今の日本では法律上、同性婚は認められていない。

「家族」に対する思いが強いほうではない。結婚とは紙切れ一枚の問題だと頭ではわかっている。わかってはいるが、その紙切れ一枚にこだわり、夢を見るのだ。

「だけど、今のままでは夢を見ることができません」

 どちらかが病気や事故などで入院した際、診察には「家族」以外は立ち会えない。パートナーとはそうした話はしていない。その時になってみないとわからないという。また、死んでも、同性婚のカップルは同じ墓に入ることはできない。日本の慣例では、家の墓(一般墓)には「親族」でなければ一緒に埋葬することはできないからだ。墓に対しては絶望的。地元には父親がつくった墓があるが、そこに入ったとして、誰が管理し私を供養してくれるのか。「無縁仏」になるしかないのだろうか──。今かろうじて考えられるのは、こんなことだ。

「死んだ後、迷惑にならないような手続きがあればいいな」

(編集部・野村昌二)

AERA 2017年11月20日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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