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衆院選前に野党がたった1日で消滅 「まともな国では起きない」と高村薫氏

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大平誠AERA#2017解散総選挙

かつての日本新党と希望の党の違いについて、「戦後民主主義の延長線上にあったし、選挙後に自民と連立するなどと言い出す空気すらなかった」 (c)朝日新聞社

かつての日本新党と希望の党の違いについて、「戦後民主主義の延長線上にあったし、選挙後に自民と連立するなどと言い出す空気すらなかった」 (c)朝日新聞社

 私は一有権者として政治家の重大な発言はわりに覚えています。だから小池さんが核武装も検討に値すると発言したことも、防衛大臣時代に喜々として自民党の安保観を代弁していたことも、靖国神社に参拝を続けてきたことも覚えている。最近とても驚いたのは、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送らなかったことです。タカ派で知られた石原慎太郎氏でさえ毎年してきたし、歴代都知事は全員が行ってきたことです。

 有権者で今の生活に大満足という人がいるでしょうか。好景気の実感は全くないし、非正規雇用者は特に長時間労働を強いられているし、大金かけて塾に行き倒さないといい学校に進めないような教育格差の拡大。富の再分配がきちんと行われず、経済政策も日銀の金融政策任せ。新エネルギー政策を本気で推進したらすごい産業構造の改革が起こるはずなのに、グズグズと原子力になし崩しに戻す。沖縄に強いてきた米軍基地負担問題だって、本来は返還から総括して経緯を理解したうえで議論しなければいけないのに、争点にすらなっていない。暮らしも社会も全て政治のせいで傷んでいるのに、有権者が「不透明だね」という情緒的な疑問で終わらせている。

 私が選挙権を得て四十数年になりますが、今回は間違いなく最低の選挙です。仮にどんな結果が出ても、改憲勢力の大連立でしょう。かつて派閥の均衡のうえにハト派からタカ派までが共存し、長期政権を築いた自民党はマシだったんだなと、振り返ればしみじみと思います。

 小選挙区制がその派閥政治を壊し、風頼みで選挙結果が左右され、本来政治家の資質のない人が当選しては問題を起こす繰り返し。揚げ句の果てに5年前まで政権政党だった野党第1党が、たった一日で消滅するマンガみたいなこと、まともな国では起きませんよ。行政府の長である首相が自分を立法府の長と平気で間違えたり、捜査機関も裁判所も政府にベッタリのこの国は、そもそも三権分立が機能していない。有権者はもっと怒らなきゃいけないんですよ。(構成 編集部・大平誠)

AERA 2017年10月23日号


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