「子どもの時に見たものに価値を見いだしているのだと思います」(辻中さん)

「ガラクタ」。かつてそう呼ばれていたモノが脚光を浴びている。熱い視線を送るのが中国人だ。

 経済評論家の森永卓郎さん(60)は言う。

「かつてはヨーロッパ市場が評価することで日本の美術品の価値が高まるという流れがあったが、いま市場を牽引(けんいん)しているのは中国。90年代まで日本で作られていたトミカがいきなり値上がりしたのは中国人が買ったから。私のB宝館でも、展示していないトミカなどを中国人が大量に買っていくことがあります。ゴミをお宝にする風は、中国から吹いてくるかもしれません」

 森永さんは2014年、50年以上かけて集めた12万点の“お宝”を展示する「B宝館」を埼玉県所沢市にオープンさせた。これまで使った総額は2千万~3千万円、博物館の建物購入とリノベーションには2億円近い額を投入した。テレビ番組の企画ですべてのコレクションの価値を算定してもらったが、「全部で200万~400万円」という結果になった。

●妻や家族から迫害

 世界的なおもちゃコレクターで知られる北原照久さん(69)に影響を受け本格的にコレクションを始めた森永さんだが、北原さんが集めるようなおしゃれなものにはあまり手を出さない。「B級」で「おバカ」なものが集まっているから「B宝館」、というわけだ。

 ミニカーに鉄道、飛行機模型、グリコのおまけに各種フィギュア、ソニーの古いウォークマンや昔の携帯電話、コカ・コーラの歴代缶、崎陽軒のシウマイ弁当についている醤油さし、ペットボトルのふた、飛行機の機内でもらえる紙コップ。果ては、世界各国で売られているヤクルトの空容器まである。

 算定価格を見てもわかるとおり、誰が見ても価値のあるコレクションは、むしろ少ないかもしれない。特にかさばる立体もののコレクションは、妻や家族などに迫害される運命にある。わかる人以外にはゴミにしか見えないお宝だが、将来的に価値が急上昇する潜在力は十分にあると森永さんは言う。

「もともと日本人の作るものは造形も細かく、技術的にも優れているものが多い。ペットボトルのふただって、指でこすってもインキが落ちないのは日本製くらいです。ここにあるものも、100年後には価値が出ているものがあるかもしれません」

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