コレクションは一種の自己表現である。「コレクションする基準は、自分が面白いと思うかどうかです」と森永さん。一見ガラクタにしか見えない粗大ゴミやタンスの肥やしが、実は「お宝」かもしれない/森永さんの「B宝館」、「まんだらけ」から(撮影/高井正彦、品田裕美)
コレクションは一種の自己表現である。「コレクションする基準は、自分が面白いと思うかどうかです」と森永さん。一見ガラクタにしか見えない粗大ゴミやタンスの肥やしが、実は「お宝」かもしれない/森永さんの「B宝館」、「まんだらけ」から(撮影/高井正彦、品田裕美)
100年後に価値が出る珠玉のコレクション/経済評論家 森永卓郎さん(60) 年間1千万円近い赤字が出ている「B宝館」のために必死で働いています。あちこちの自治体に寄贈を持ちかけたが、ランニングコストが高く実現には至っていません。客は1日15人程度だが、遠くメキシコから見に来た人もいます(撮影/高井正彦)
100年後に価値が出る珠玉のコレクション/経済評論家 森永卓郎さん(60) 年間1千万円近い赤字が出ている「B宝館」のために必死で働いています。あちこちの自治体に寄贈を持ちかけたが、ランニングコストが高く実現には至っていません。客は1日15人程度だが、遠くメキシコから見に来た人もいます(撮影/高井正彦)

「断捨離」と言われても、なかなかモノが捨てられない。だが、インターネットのおかげで、実家の片づけや引っ越しで出るガラクタにも値がつく時代に。訪日する中国人が、家の片隅に置かれた中国骨董に高値をつけ、メルカリでどんどん遺品整理もできる。タンスの中は、宝の山だ。AERA 2017年9月25日号では「お宝流出時代」を大特集。自宅におよそ12万点の“お宝”を所有する経済評論家・森永卓郎さんに、その背景と外国人に人気の“お宝”を聞いた。

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 8月下旬の午後、サブカルの総本山「まんだらけ」(東京都中野区)で声優のブロマイドやパンフレット、マフラータオルなどのグッズを中腰になって真剣にのぞき込んでいる男性2人がいた。台湾の大学生、謝承儒(シエチェンルー)さん(19)と、陳信安(チェンシンアン)さん(20)。ともに日本のアニメや声優が大好きだという。謝さんは声を弾ませ、興奮が抑えきれない様子で話す。

「一番好きなアニメは『この美術部には問題がある!』。今日は写真集や声優のファングッズ、フィギュアを買うつもり」

●中国人が熱狂する日本

 2人は旅行費用を抑えるためにユースホステルに泊まっているというが、「ここ(まんだらけ)には面白いものがたくさんある」と聞いてやってきた。予算は1万~2万円。記者の質問が終わると、2人は眼鏡の奥の目を輝かせながら、お宝の海へと分け入っていった。

 まんだらけの副社長、辻中雄二郎さん(46)によれば、中国や台湾からのお客をよく見るようになったのはここ2、3年。

「人気は1970~80年代に日本で流行(はや)ったマジンガーZなどロボットのおもちゃ。同人誌や漫画もよく買っていかれます」

 最近、中国人が「爆買い」しているのが、ジブリの宮崎駿氏やドラゴンボールの鳥山明氏、ガンダムの生みの親のひとり安彦良和氏といった日本のアニメーターや漫画家が描いたとされる原画や直筆の原稿だ。同社のネットオークションで買えるが、これまでの最高支払金額は、1回のオークションでトータル5千万円。50歳くらいの中国人が高額商品を複数落札したという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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