では、本当の意味でのレッドラインはどこにあるのか。もちろん、私はトランプ政権内の人間ではないので、あくまでも個人的な見解だと強調しておく。平和解決が成立するまで戦争行為や武力行使を完全停止するという朝鮮戦争休戦協定に違反した時は確実にこれにあたる。また、米国や同盟国への直接攻撃があった場合もそうだ。これにはサイバー攻撃などの新しい形の攻撃も含まれる。

●米日韓の協力を

 一方で、核・ミサイル実験の継続がレッドラインになるかというと、私は懐疑的だ。北朝鮮が実験で発射したミサイルの迎撃はあるかもしれないが、核施設への攻撃を含めた本格的な軍事行動に米国が出るとは思えない。トランプ政権内の実力者たちは、北朝鮮との軍事シナリオで、多くの犠牲が出る危険性を熟知している。これは、北朝鮮を通じて核兵器がテロリストの手にわたってしまう危険性も含めたものだ。

 米国民が北朝鮮問題をどう見ているのか。最も危険な脅威だと見ていることを示す世論調査はたくさんある。ただ、米政権が平壌に対し効果的な圧力をかけ続けることに苦労していることもあって、うんざりしている部分はある。中東情勢やロシアとの問題など国際的な関心事項はたくさんあるのだ。だからと言って、米国世論が北朝鮮の現実的な脅威を理解していないと過小評価するべきではない。米政権や同盟国が北朝鮮に強い立場を維持し続けることを、米国民は支持しているはずだ。

 解決のカギは、米日韓の協力にある。3カ国の連携を嫌がる中国への圧力にもなる。

 だからこそ日本の人たちに言いたい。韓国をもっと実際の盟友として認識することが必要だ。そうでないと、日韓関係の亀裂を北朝鮮にうまく利用され、それが米日韓全体の連携の亀裂につながってしまう。もう一つ、日本の世論は、国防費の必要性を認識するべきだと思う。国防費のGDP比が、バルバドスやドミニカ共和国などの島国よりも小さい日本が今、核を保有する世界で最も危険な独裁国家の標的になっているという現状を受け止めてほしい。(構成/編集部・山本大輔)

AERA 2017年9月25日号