Michael Green/1961年生まれ。G・W・ブッシュ政権時にホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長。安倍晋三首相とも親交がある知日派で、朝鮮半島情勢にも詳しい (c)朝日新聞社
Michael Green/1961年生まれ。G・W・ブッシュ政権時にホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長。安倍晋三首相とも親交がある知日派で、朝鮮半島情勢にも詳しい (c)朝日新聞社

 安倍政権とも親交がある元米高官のマイケル・グリーン米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長が、本誌の取材で北朝鮮問題を語った。日本国民に訴えたいことがあるという。

 日本語が堪能なグリーン氏は、ブッシュ(子)政権で高官を務めた後も、米政界とパイプを持つアジア情勢の専門家として、日本政界でも影響力を持つ。安倍晋三首相を始め、各政党の実力者とも親交がある。朝鮮半島情勢への懸念は、今年初めの本誌取材でも表明していた。

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 北朝鮮は、建国70周年の来年までに米国への核攻撃能力を完成させようとしているという見方があるが、非常にあり得る話だ。私の個人的な見解としては、金正恩(キムジョンウン)体制は米国本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を1、2年以内に完成する。ただし、ICBMを飛ばせるようにはなっても、その確実性や正確性には疑問が残る。

 国際社会の北朝鮮対応が不十分となっている背景には、やはり中国の存在がある。北朝鮮が経済的支援を受け続け、核・ミサイル技術を入手できるような抜け穴を用意しているからだ。次の手段は、この抜け穴を完全に封じることでなければならない。中国の企業などを対象とする2次的制裁となり、中国との緊張に結びつく可能性があるとしても、断固として進めるべきだ。それほど北朝鮮の脅威は深刻なものとなっている。

●休戦協定に違反した時

 トランプ大統領が軍事力行使に本気でない限り、「レッドライン(越えてはならない一線)」という言葉を使ったのは失敗だった。これはオバマ前政権のシリアでの失敗を見れば、よく分かる。オバマ氏は、シリア内戦での化学兵器の使用が、同国のアサド政権に対するレッドラインだと公言したが、2013年に実際に化学兵器が使われたと米政府が認めた際、軍事行使をしなかった。米国は弱腰だと見られ、信頼性にも傷がついた。圧力や警告といった政治的意味合いでのレッドラインという言葉は使わないほうがいい。

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