
広大な自然。おいしい食べ物。人懐っこくて温かい人たち。長く寒い冬の後にやってくる、輝くような短い夏。北海道に魅せられた移住者たちが、この土地の新たな1ページを開いている。北海道で気象予報士として活動する道を選んだ女性を取材した。
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好きな北海道弁がある、という。横浜出身の気象予報士、菅井貴子さんだ。
「なんも、なんも」
この言葉を聞くとほっこりする、という。道を尋ねて、お礼を言った時などに飛び出すこの言葉。「どういたしまして」といった意味だ。
「北海道の人は優しく、親切」
菅井さんが北海道への移住を意識したきっかけは東京都内の大学に進学、サークル活動の勧誘を受けた時に遡る。
「合宿は北海道」
自転車部の勧誘だった。「自転車で北海道を巡るのもいいか」と入部を決めた。合宿では、組み立て式の高価な自転車を買い込み、釧路空港に降り立った。
「空の青さが違う。とにかく広い」
釧路湿原をはじめ道東を回った。行く先々で地元の人たちから「来てくれてありがとう」とお礼を言われた。翌年からは一人旅。困っていると、地元の人たちが声をかけてくれた。道を歩けば、「どこまで行く? 乗ってけ」と車を止めてくれた。
「これなら、北海道で生きていける」
大学を卒業した菅井さんは、気象予報士となった。北海道で暮らしたい、と放送局の求人を見つける度に応募。05年、ついに念願かない、NHK札幌放送局の気象キャスターとなった。
北海道内の気候は地域により大きく異なる。年平均気温は「最も高い町と一番低い町とでは気温差が7度近い。東北と九州の気温差に相当する」。北海道の広大さをお天気でも実感。
一方、冬などのすさまじい荒天にたじろぐ。先輩の気象キャスターからは「北海道での気象災害で人が亡くなったら、自分のせいだと思いなさい」と戒められた。
「北海道を元気にする天気予報がしたい」
(ジャーナリスト・綱島洋一)
※AERA 2017年7月31日号
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