「もともと『金もうけだ』と先輩方からお叱りを受けることが多かったのですが、今ではどういう気持ちで派遣を受けるのか、どういった式を行って、どういうことを話すのかと質問を多く受けるようになりました。だんだん意識が変わってきていると感じます」

 矢野経済研究所(東京都中野区)によれば、葬祭ビジネス市場は近年1.7兆円台で推移。市場の伸びは鈍いが、多死社会を迎え死者は確実に増えていく。新たなビジネスチャンスを狙い、異業種からの参入や奇抜な演出を売りにする葬儀も相次ぐ。

●葬儀も明るく個性的に

 色とりどりの花々、友人からのメッセージ、入り口にはウェルカムボードと、その横に添えられた笑顔の写真。結婚式のようだが、葬式なのだ。02年に設立した葬儀社「アーバンフューネス」(東京都江東区)が始めたサービス。創業者は結婚式業界にいた。

 同社は結婚式のように、お金をかける、かけないを選べるビジネスモデルを構築した。

 家族以外も参列する「一般葬」の場合、一番安い価格は60万円から。今では月に約200件の葬式をプロデュースし、17年9月期決算の年間葬式件数は2500件、売り上げは28億円の見込みだ。同社葬祭営業部長の本多亮之(あきゆき)さん(40)は言う。

「葬式をどのような場にするかをお客様と決めることが大前提です。その上で、単なる儀式ではなく、故人がどう生きたかを振り返る。そこに意味を持たせたいと思っています」

●色鮮やかなLED仏

 愛知県豊田市の葬儀会社「FUNE」。これまで「感動葬儀」として音楽の生演奏を取り入れた葬儀を演出してきたが、6年前に「故人をしのぶ時間を、より感動的にしたい」と、同社の三浦直樹社長が映像システムの導入を決めた。

 祭壇裏の巨大スクリーンに、故人が好きだった風景や思い出の写真が映し出されそこにバイオリンやピアノの生演奏が流れる──。システムを開発した「ファンテックス」(愛知県豊橋市)では、生花祭壇に蝶やホタルの映像が舞うといったプロジェクションマッピングを活用した「祭壇マッピング」も展開する。

 葬儀の明るいショー化に抵抗する仏教者もいるが、寺院側にも変革は起きている。東京都新宿区の大江戸線牛込柳町駅から徒歩2分。閑静な住宅街にある日蓮宗の幸國(こうこく)寺。その緑豊かな敷地内に、06年にできた永代供養納骨堂の琉璃(るり)殿がある。お参りすると、故人などを表すガラス製の仏像(一体20センチ弱)が白く光る。LEDで色は黄や青へと鮮やかに変わる。

「現在、琉璃殿には2046体のうち、600弱の方が入っていて、生前予約は200件です」

 そう話すのは幸國寺28世住職の矢嶋泰淳(たいじゅん)さん(65)。きっかけは、檀家の40代独身男性の一言。

「(墓を)つくってもしょうがない。ひとりなもんで……」

“みんなのお墓”的なものがあってもいいのでは、という考えの下、91年に屋外に永代供養墓を設けた。その後、屋内型の琉璃殿を建てた。宗派は基本的に問わない。同寺では、普通の墓(永代使用料)は1平方メートルあたり180万円が目安。対する琉璃殿は遺骨の合祀(ごうし)、個別に納骨などが選択でき、個人の場合は金額が9万円から75万円。現在は月に10人ほどが永代供養の相談に来る。

「永代供養墓を積極的に勧めているわけではありません。お身内がおらず、将来が不安という方の最後の手段。同じ志を持った方に来てほしい」(矢嶋住職)

(編集部・野村昌二、小野ヒデコ、長倉克枝、山口亮子)

AERA 2017年8月7日

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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