幸國寺の琉璃殿内では、光り輝く2046体の仏像が参拝者を迎える。桃色、青色、黄色など春夏秋冬をイメージしたグラデーションが続く(撮影/写真部・大野洋介)
幸國寺の琉璃殿内では、光り輝く2046体の仏像が参拝者を迎える。桃色、青色、黄色など春夏秋冬をイメージしたグラデーションが続く(撮影/写真部・大野洋介)
古代ガラスの製法で作られた仏像は、あたたかみを感じさせる(撮影/写真部・大野洋介)
古代ガラスの製法で作られた仏像は、あたたかみを感じさせる(撮影/写真部・大野洋介)
八角堂の琉璃殿。外国人観光客や海外メディアも訪れる(撮影/写真部・大野洋介)
八角堂の琉璃殿。外国人観光客や海外メディアも訪れる(撮影/写真部・大野洋介)
琉璃殿入り口でICカードをかざすと、該当する仏像のLEDランプが点滅する。人の呼吸と同じリズムだ(撮影/写真部・大野洋介)
琉璃殿入り口でICカードをかざすと、該当する仏像のLEDランプが点滅する。人の呼吸と同じリズムだ(撮影/写真部・大野洋介)

 日本人がなじんできた「お葬式のかたち」がいま激変している。従来型のお葬式ではなく、「家族葬」が広く受け入れられ、弔いの形は家から個へ――。葬儀費用の「見える化」と価格破壊は何を生むのか。AERA 8月7日号で、新しい葬式の姿と、大きく影響を受ける仏教寺院のいまを追った。

 日本人がなじんできた「葬式のかたち」がいま激変している。従来型のお葬式でなく、「家族葬」が広く受け入れられ、弔いの形は家から個へ──。新しい葬式の姿を追った。

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「スター・トレック」などのSF映画や、有人月面着陸のアポロ計画を見て育った世代には、宇宙への憧れを抱く人も少なくないだろう。そんな夢を死後にかなえられるのが「宇宙葬」だ。

 故人の遺灰1~7グラムをカプセルに入れ、小型ロケットで宇宙空間に打ち上げたり、地球を周回する人工衛星に載せたりする。民間のロケット打ち上げが活発な米国で始まったが、米企業と提携して日本でも宇宙葬が始まっている。

 葬祭会社「銀河ステージ」(東京都港区、大阪市)は2014年に日本人2人、15年に3人の宇宙葬を手がけた。遺灰が入ったカプセルを、全長3~4メートルほどの宇宙葬専用ロケットで米ニューメキシコ州から打ち上げる。宇宙空間に数分間とどまり、その後ロケットは大気圏に落下して遺灰は燃え尽きる。価格は45万円(税抜き)から。

 次回打ち上げは9月中旬を予定しており、すでに国内で11人が申し込んだ。

「宇宙への憧れのある60~70代の男性やその家族が希望することが多い」

 と同社メモリアルプランナーの佐野高志さんは話す。

 西山浄土宗泰聖寺(大阪市)副住職の純空壮宏(じゅんくうそうこう)さん(40)は昨年、宇宙葬の生前予約をした。海洋散骨など分骨の相談が増えたことをきっかけに調べ始め、宇宙葬を知った。

「お釈迦様の骨は世界中に分骨されています。宇宙葬も現代社会での供養のひとつです」

 と話す。墓に納骨したうえで故人の遺言に合わせて分骨するのはよいのではと考えている。自身は子どもの頃から宇宙飛行士に憧れていたこともあり、宇宙葬の予約をした。

 さらに、今後は米航空宇宙局(NASA)の調査と連携して、月面に遺灰を持っていく宇宙葬の計画もある。まだ打ち上げ日程は未定だが、生前予約をしている会社役員の男性は言う。

「家族や会社を、月から見守っていたい」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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