長野県南部では、見舞いに行けないまま亡くなると、まずはお見舞いに行く。故人の枕元に、赤い袋の金封や包みが積まれていく。間に合わない場合には葬儀に香典と共に持っていくこともある。

「その風習を知らない親族が、『なぜ祝儀袋があるんだ』と怒り出した、という話も聞きました」(同)

●トラブル多発の歴史も

 ローカルルールにはトラブルがつきものだ。戦前から戦後にかけて、各地を人が行き来し、様々なローカルルールが入り乱れる状況は、悲喜こもごも、トラブルの歴史でもあったという。

「今もネットの相談掲示板等では各地の葬儀の慣習を『おかしい』『ありえない』とひとつの物差しで測ろうとするやりとりが散見されます。時代により感覚は変わるもの。一風変わっていると思う慣習に出合っても、自分が知っていることがすべてとは限らないと考え、まずは受け止めるのが賢明です」(山田さん)

 少しさびしい話もある。

「葬儀は都心を中心に均質化が進んでいます。90年代以降は『家族葬』が中心になり、人を集めない方向へシフトしています」(同)

 死を悼むローカルルールは、急速に失われつつあるという。

(編集部・澤志保)

AERA 2017年7月10日号