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しらたきを入れても肉は硬くならない? 料理の“常識”を調べてみると…

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by 長倉克枝

すき焼きにしらたきを入れても肉は硬くならないことがわかった=東京・銀座の「匠苑にくいち」で(撮影/岡田晃奈)

すき焼きにしらたきを入れても肉は硬くならないことがわかった=東京・銀座の「匠苑にくいち」で(撮影/岡田晃奈)

うどんの硬さを機械を使って測定する大楠さん。大楠さんは、うどんの評価方法の著書もある(撮影/高井正彦)

うどんの硬さを機械を使って測定する大楠さん。大楠さんは、うどんの評価方法の著書もある(撮影/高井正彦)

「木乃婦」代表取締役 高橋拓児さん/京都で約80年続く老舗「木乃婦」の3代目店主。京都大学で「おいしさ」の研究で修士号取得。ソムリエ資格を持つ(撮影/MIKIKO)

「木乃婦」代表取締役 高橋拓児さん/京都で約80年続く老舗「木乃婦」の3代目店主。京都大学で「おいしさ」の研究で修士号取得。ソムリエ資格を持つ(撮影/MIKIKO)

小麦粉を圧縮して色を確認する大楠さん。質のいい小麦粉ほど色が白い(撮影/高井正彦)

小麦粉を圧縮して色を確認する大楠さん。質のいい小麦粉ほど色が白い(撮影/高井正彦)

龍谷大学教授・食の嗜好研究センター長 伏木亨さん/専門は農芸化学と栄養化学。『味覚と嗜好のサイエンス』など食の科学にまつわる著書多数。日本料理アカデミー理事も務める(撮影/MIKIKO)

龍谷大学教授・食の嗜好研究センター長 伏木亨さん/専門は農芸化学と栄養化学。『味覚と嗜好のサイエンス』など食の科学にまつわる著書多数。日本料理アカデミー理事も務める(撮影/MIKIKO)

「料理を科学」する試みが広がっている。研究者と料理人の「研究会」から、京都の料亭では新たな料理が次々と生まれている。おいしい料理を求める強い思いが、料理も科学も進歩させているようだ。

 今日は家族ですき焼き。

「お肉が硬くなるから、お肉としらたきは一緒に入れてはダメ」

 そう母親からたしなめられたことがある人も少なくないだろう。しらたきに含まれるカルシウムによってアルカリ性になり、肉が硬くなると考えられていたのだ。ところが、

「本当にそう? しらたきに含まれるカルシウム成分は、焼き豆腐の半分。ちょっと試験をして確かめてみればわかるはず」

 と、日本こんにゃく協会の事務局長に就任したばかりの原田都夫さんは考えた。そこで、検査機関に依頼をして、しらたき入りとなしでは、すき焼きの肉(国産和牛肩ロース、アメリカ産肩ロース)の硬さがどう変わるのか、調べてもらった。
 その結果、しらたきを入れても入れなくても、肉の硬さに違いはないことがわかったのだ。

「しらたきがすき焼きの肉を硬くするというのは、誤解だったのです」

 と、原田さんは話す。

●青物に塩で色が出る?

「すき焼きにしらたき」に限らず、料理の世界では経験や慣習から「こういうもの」とされているものが少なくない。

 でも、本当にそうなのだろうか? 「おいしさ」の研究に30年以上にわたって取り組んでいる、龍谷大学教授で食の嗜好研究センター長の伏木亨さんも、疑問を持った一人だ。

「青物を湯がく時に塩を入れると、青い色になると料理人は言います。でも、塩は塩化ナトリウム。ナトリウムが色を保持するのはありえないと不思議に思いました」

 そこで思いついたのが「にがり」。

 かつては塩と言えばにがりが含まれる天然の塩だった。にがりに含まれるマグネシウムには、色を保持する効果がある。伏木さんは言う。

「青物の色を保持するのに役立つのは昔のにがりが含まれていた塩であって、今のにがりが含まれていない塩では、効果はあまり期待できないのかもしれません」

 今、伏木さんたちは、料理人たちと組んで、経験や慣習から来る先入観を取り払って、「料理を科学」し、おいしい料理を作り出そうとする試みに取り組んでいる。


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