成毛:医師不足や医師自体の高齢化も指摘されていましたね。患者側で病院や医師を賢く選んでいこう、もしもの時に人脈のある主治医を持っておこうという提案はもっともだと思います。

 ただ、現役世代には、病院に足繁く通う時間はないでしょう。ぼく自身、家族が心配するので2年に1回、人間ドックを受けている程度です。仕事柄、弁護士はたくさん知っているんですが(笑)、残念ながら臨床医の知り合いはそういません。医師はとにかく忙しいでしょう。

●超高齢者が都市で急増

上:そのとおりですね。ただし、やはり健康リスクが上がるのは、高齢者ですから。

 けれども、病院に通わないと医療が受けられない、という時代は終わると思いますよ。固定費のかかる大きな病院を建てても、もはやいいことは何ひとつないからです。今後は遠隔診療がメインになっていき、スマホひとつで診察を受けられる時代も近づいていると思います。医師にとっても患者にとっても、よいことだと思います。

成毛:それでも、日本の医療の未来は暗いんですか?

上:この5年で、75歳以上の人口が急激に増えているんです。樋口朝霞さんという若い研究者が、2040年までの高齢者人口の地域格差を調べています。それによると、75歳以上人口は25年までに急速に都市部で増加すると予想されます。愛知県西尾市は、99%の増加です。

 そこで、認知症の問題がますます深刻になる。現在ですら、家族も医療も到底ケアしきれる状況にありません。

成毛:シビアな問題ですね。日本国内ではとても人手が足りないわけですから、やはり、カギになるのは、移民政策ですよね。

上:出生率が2を切っているのに、50年まで人口が減る先進国がほとんどないのは、移民を受け入れているからです。「ネイチャー」や「サイエンス」などの科学誌は、「正規移民と不法移民の犯罪率の違い」「移民研究者のキャリアパス」など、移民に関する特集を毎週組んでいますよ。本来なら、日本も移民政策に積極的に打って出るべきです。

成毛:しかし、「こんな技能を持った人に来てほしい」などと、日本が移民の条件を細かく選択できる側だった時代はもう終わっているでしょう。移民にとって、日本は魅力的な環境でしょうか。ぼくが移民の立場で選ぶとしたら、間違いなく中国を選びます。

 日本人は中国を下に見る傾向がありますが、中国は上流階層が全体の10%の1億3千万人。つまり日本の人口と同じくらいの人数が、日本の数倍はリッチです。

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