年収の増減(AERA 2017年5月22日号より)
年収の増減(AERA 2017年5月22日号より)

 2020年の東京五輪に向けて、新卒採用だけでなく、40代以上も含めた転職市場が活況だ。気になるのは転職後の年収のアップダウンだが、自己実現を優先しようと地方に移る人、お金に価値を置かない転職も増えている。AERA 5月22日号では「転職のリアル」を大特集。転職をまじめに考えている人、うっすら意識している人にも読んで欲しい。

 40代での転職で、年収アップは容易ではない。むしろ、年収にこだわって失敗し、再び職探しする羽目になることも。積み上げたキャリアから見える「直感」を大事にしよう。

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 2015年の正月、中山理香さん(46)は、40年後の未来を予測した本『2052』(日経BP社)を読んでいた。未来に対して、大人たちは責任を持っている──そんな一節にふと目が留まった。それが、決断の瞬間だった。

 いま、ヘルスケア事業を幅広く手掛けるベンチャー企業「FiNC」で人事戦略を担当する。専業主婦の期間をはさんで、現職で5社目。前職は大手IT企業で、年収は下がったというが、健康とテクノロジーで社会問題を解決する、という会社のビジョンに共鳴し、転職を決めた。転職サイト「ビズリーチ」のスカウトメールを受けて最初に会社訪問をしたときは、「ハードワークぶりが見えて、“ない”と思った」と言うが、採用担当者は「残業しなくてもいい人が1人くらいいる、そういう段階に会社は来ています」と熱心に説得してきた。子どもを持ってからずっと心にあった「働くことで社会を良くしていきたい」という思いが、最後に自分の背中を押した。今は採用も担当する中山さんは言う。

「若い人は自分が活躍できるか、裁量権があるかという観点で動く。でも年齢を重ねれば、会社のビジョンに共鳴できるかが転職のポイントになってくる」

●迷ったら転職しない

 教育系ベンチャー「マナボ」の小林佳徳さん(44)はこれまでライブドア、ベネッセの出戻り転職を含め9回の転職をしてきた。「迷ったら転職しないほうがいい」とも言う。

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福井洋平

福井洋平

2001年朝日新聞社に入社。週刊朝日、青森総局、AERA、AERAムック教育、ジュニア編集部などを経て2023年「あさがくナビ」編集長に就任。「就活ニュースペーパー」で就活生の役に立つ情報を発信中。

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