日本社会の右傾化を、戦前からの伝統を持つ右翼団体はどう受け止めているのか(※写真はイメージ)
日本社会の右傾化を、戦前からの伝統を持つ右翼団体はどう受け止めているのか(※写真はイメージ)

「安倍首相ガンバレ」を叫ぶ子どもたち、教育勅語を朗唱させる幼稚園……。森友学園問題に端を発して「右翼」という人たちが、にわかにクローズアップされている。AERA 2017年5月1-8日号では「右傾化する日本」を大特集。「右翼」って何?「保守」とどう違う? 素朴な疑問に答える。

 日本社会の右傾化を、戦前からの伝統を持つ右翼団体はどう受け止めているのか。一水会元最高顧問で、のりこえねっと共同代表である鈴木邦男氏に話を聞いた。

*  *  *

 愛国者になるのは簡単なんです。自己申告ですから。自分は愛国者だと言っている人を1万人くらい見ていますが、皆インチキですよ。森友学園の問題を見て、なぜそれが政治家のトップである安倍首相にわからなかったのかと思います。

 僕は君が代を1万回くらい歌っているし、靖国神社にも何百回も行って、左翼と闘い、警察にもずいぶんつかまっている。ですが今、そういった実体験に基づかない「観念の愛国心」のようなものが広がっている。在特会のような排除の思想ですね。

 僕らの学生時代にもネトウヨ的な人がいたんです。どちらかというと愛国者だけれど、右翼も左翼も暴力的だから付き合いたくないと言う。それで僕らの後ろのほうにいて、左翼学生の写真を撮っていた。それを公安に持って行っていたんです。

「彼らは左翼である前にわれわれの学友じゃないか」と言ったら、「いや、彼らは共産主義者で、日本を売る人間だ。学友以前に敵なんだ」と、最初から相手を切り捨てていましたよ。

「愛国無罪」という言葉がありますが、愛国心は犯罪者を救済しますね。「俺は愛国者だから何をやってもいいんだ」「愛国者だから認められるべきだ」と、理由づけを与える。家でも学校でも地域でも嫌われて、でも俺は日本を愛しているし、日本も俺を必要としているんだというのは、妄想の世界です。そういう人をいっぱい見てきた。そういう考えがまた、反社会的なことにすぐ結びつくんですよ。それが怖い。

次のページ