トシ:マスコミの報道が減って、風化してきているっていう変化は感じる。でも、今も福島の人たちと話すと言われるんですよ。「あいつらは補償金もらってるんだから、何もあげなくていい」とか。もちろん、一部の人ですよ。でも、6年経っても、そんな声が漏れてくるって、何が「節目は超えた」だ、バカヤローって思う。

ボス:現場はさほど変わってなくて、周りが変わってきているのかもね。どっちにしても考えることはやめちゃダメだと思う。

──トシロウさんは震災後から、それまでやらなかったMCをやるようになりました。ボイトレもやるようになったとか。

トシ:音楽をちゃんとやってこなかったんですよ、俺。本当恥ずかしい。練習して歌をうまく歌おうと考えたこともなかった。けど、震災から10日後ぐらいに、地元の水戸でライブハウスをやっている友達が「半年先までのスケジュールが飛んだ」っていうんで、じゃあ俺らがやろうか?って行ったんですよ。ライブの直前までは、いつものようにワーッてやって、マイクたたきつけて帰ろうと思ってた。でも、そのライブを見に来たヤツらを見たら、みんな手を上げてノっていいのか、どうしたらいいのかわからない表情をしていたんです。一言添えないと歌えなかった。歌だけじゃ、あの雰囲気を崩せないと思った。本当は、説明するのが嫌で音楽やってたのに、そのときに初めて言葉の重要さを知りましたね。

●野菜や魚をもらったり

──言葉の力を生かして、三宅洋平さんのように政治の世界に挑戦するという道もあります。

ボス:オファーあるでしょ?

トシ:絶対、嫌だよ! 音楽が一番面白くて続けてるんだから。なんで、そんな世界にたたき込まれないといけないのよ?(笑)

──では、バンドと被災地支援は今後もずっと続けていくと?

トシ:いや、“支援”だなんて思ってないですよ。ただ、友達に会いに行ってるだけ。歌う代わりに野菜や魚をもらったり。

ボス:そこがトシロウのすごいところだよね。被災地の人たちとの距離がとても近い。

トシ:でも、俺は「もう来なくていいよ」って言われたい。俺らがやれることがなくなったら、復興したってことだから。MCをやめるっていうのも一つのゴール。言葉にして伝えなくてもいい時代に戻ったってことだから。それが、俺の理想ですね。

(聞き手・構成/田茂井治)

AERA 2017年4月17日号