●気分転換なくイライラ

 もちろん、どんな薬もメリットばかりではない。

「アンフェタミン(覚醒剤)と似た化学構造を持っているので、依存性が高いという問題があります。長く続けると効き目が落ちるので、3カ月続けたら次の3カ月は必ず休薬する必要があります」

 食欲抑制剤はサノレックスのほかに、海外で出回っている薬もあり、個人輸入などで入手する人もいる。実際に食欲抑制剤を飲んだことがあるというユウコさん(女性、42)は、その効き目についてこう振り返る。

「午前中に飲むと、お昼になってもおなかが空かないのでランチを抜いても平気。夜は子どもと一緒なので一応食べますが、普段の半分ぐらいで十分」

 産後、増えたままの56キロの体重はわずか1週間で54キロを切ったが、ユウコさんはそこで飲むのをやめてしまった。

「一日デスクワークをしているので、ランチを抜くと気分転換の機会がなくてイライラしてくる。おなかは空かないけど、食べる楽しみがないと張り合いがないんです。本気を出せばこの薬でやせられそうだということはわかったので、いざという時に飲めばいいかなと思って」

 努力がいらないはずの「やせ薬」なのに、本気を出さないと続けられないとは。ちなみに、飲むのをやめたら体重はあっという間に元に戻り、「いざという時」はまだやってこないという。

●べっとり脂が便器に

 一方、食欲ではなく吸収に働きかける薬もある。日本では未承認だが、海外では普及している「ゼニカル」という薬だ。
「消化管で脂肪の吸収を助けるリパーゼという消化酵素の働きを阻害する薬で、服用すると摂取した脂肪の3割が吸収されずに便と一緒に排出されます」

 細田医師によると、430人の男女を対象にした調査で、4週間で平均4.1%の体重減少がみられ、4人中3人が3カ月で平均8キロのダイエットに成功したという結果が報告されているという。

 サノレックスのように依存性はないため、比較的安全に飲める薬だというが、日常生活に支障を及ぼしかねない「副作用」があるという。

 実際にゼニカルを服用した自営業のヒロシさん(男性、43)は、その体験をこう語る。

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