●「時間の自由度」が大事

 20時以降の預かりに対応していない保育園や学童保育所が多いので、残業してしまうとお迎えに間に合わない。また、親として夜遅くまで子どもを預けることへの抵抗感も強いという。

 残業の多い会社では、仕事と育児の両立は難しくなる。

 神奈川県内に住むユイさん(仮名・36)は、営業職として働いていた会社を今年1月「時短切れ前」に辞めた。フルタイムで働くと、長女(3)の保育園のお迎えに間に合わなくなるからだ。

「10年以上勤めた会社だったので『正社員なのにもったいない』と親からも引き留められましたが、もう体力の限界でした」(ユイさん)

 自宅から職場まで片道1時間かかるので、18時半の終業時刻から保育園にお迎えに行くと、20時すぎになってしまう。

「同僚は残業や夜間の呼び出しにも対応しているのに、定時で帰るのも厳しい状況でした。また、保育園で最後の1、2人になるまで娘を待たせてしまうのは、かわいそうなので、親としての罪悪感がありました」(同)

 ユイさんはインターネットで派遣の仕事を見つけ、半年後、直接雇用に切り替わった。現在は、週4日、10時から17時まで働く。時給は1900円なので、すでに夫の扶養を超えている。

 子育てしながら働くために大事なのは、扶養枠を設けるよりも、「時間の自由度」だとユイさんは言う。現在は、子どもの急な発熱にも対応できるように「テレワーク」も取り入れて働いているという。“103万円の壁”を超えて働くために何が必要なのか。国はもっと当事者の声を聞くべきだ。(ライター・村田くみ)

AERA 2016年11月7日号