民進党の蓮舫代表をめぐり臨時国会でも議論となっている二重国籍。グローバル化を背景に50万人以上もの重国籍者がいるとされる。国籍についての意識や制度は時代に合っているか。
「米国籍がなくなるかもしれない。新たに留学ビザをとる必要が出てくるが、卒業が遅れることなく手続きができますか」
米国東部の州立大学で相談窓口を訪ねた2年生の女子学生(20)が質問すると、米国人スタッフは、困った表情で答えた。
「そういう相談は初めてなので、対応しかねる」
女子学生は日本人の両親が米国滞在中に誕生した。同国生まれなら自動的に国籍を認める米国と、親とのつながりで国籍を認める日本の両方の国籍を持つ。
進学した米国の大学では、米国人として留学ビザは必要ない。一方で、日本の国籍法は重国籍者に対し、22歳に達するまでに国籍の選択義務を課している。選択期限である22歳の誕生日前日が大学卒業前に来るため、悩んでいるという。
●各国で異なる国籍観
米国籍を選べば教育の問題は解消するが、日本にいる家族とのつながりにかかわる日本国籍の放棄はしたくない。
「今更なぜ国籍を変えなきゃいけないの? とても疑問だけど、法律がそうなら仕方がない。ただ、すでに二つの国で生活をしているんです。一つだけを選ぶのは、そんなに簡単なことじゃない」
日本の米国大使館担当者には、こう言われたという。
「米国で生まれた人は基本的に一生、米国籍がある。だから、それは日本側の問題です」
グローバル化に伴って日本国籍を有する両親の間に生まれても二重国籍になるケースが目立ち始めている。
重国籍は、異なる法制度を持つ各国にまたがる複雑な問題で、日本の法律だけで全てを管理するのは難しい現状がある。
その国での出生で国籍を付与する「出生地主義」(米国、カナダなど)や、家族との血のつながりを重視する「血統主義」(日本、韓国など)に加え、国際結婚や養子縁組、子どもの認知により、後からでも国籍を与える国も少なくない。逆にブラジルのように自国の国籍放棄が事実上難しい国も存在する。
●政治家だけの問題か
入り乱れる各国制度の上に二重国籍の問題はあって、これを認めるかどうかの議論には、歴史や地域情勢、価値観などに基づく国籍のとらえ方が大きく影響している。
「日本人の意識は『国籍=忠誠』の傾向が強いです」