そうした人材に選ばれるための環境づくりが重要と初鹿氏。

「人材確保において単一国籍にこだわる国と重国籍でもいい国とどっちが有利かです」

●放置された国籍法

 二重国籍について改めて丁寧に議論する時が来ている。

 国籍法や出入国管理法が専門の山脇康嗣弁護士もそう考える一人だ。

「当然、重国籍者の増加は予想されていたはず。これまでの国会の議論では、重国籍を容認するかも含めて検討しましょうとあるのに、放置されているのはおかしい」と首をかしげる。

 その上で、議論をしないにもかかわらず、現行法がしっかりと履行されていない現状があると問題提起する。

 日本の重国籍者は40万から50万人いるとされる。ただ、海外に出ていく日本人や国内に来る外国人の増加を考慮すると、すでに50万人を超えている可能性が高いと山脇弁護士は推測する。この中には、国籍の選択義務を果たさずに、二重国籍を維持している人も相当数含まれているという。

 国籍法では、出生からの重国籍者には22歳に達するまでに、国際結婚など後天的に重国籍を得た人は2年以内に国籍を選ぶ義務がある。選ばない場合、法相が催告し、1カ月以内に日本国籍の選択がなければ、日本国籍を剥奪(はくだつ)できるが、実際には催告も剥奪も一度も行われたことがない。

「異なる国籍の両親の間に生まれれば、両方の国に愛着を持つのは自然な感情で、一定期間で必ず一方を選ぶのは酷な面がある。日本国籍の剥奪は、本人のみならず親族など関係者の生活にも極めて重大な影響が及ぶ」(山脇弁護士)

 こうした配慮が法務省にあるという。

「ならば議論して国籍法を変えればいい。議論せずに行政府の勝手な判断で、法を放置したままにするのはおかしい」

 そして議論には、犯罪者による重国籍の悪用の危険性や、他国でテロなどに巻き込まれた時の国民(邦人)保護、兵役、犯罪者引き渡しなど二国間の「義務の衝突」といったデメリットも含まれるべきだと主張する。

 山脇弁護士は現状、重国籍を容認する状態にはないと考えているが、「国際結婚も増えているし、将来的には分からない」。

 だからこそ、蓮舫氏の問題で焦点があたった機を生かし、二重国籍についての議論が深まることに期待している。(編集部・山本大輔)

AERA 2016年10月24日号