医学部は「職業訓練校」でもあり、臨床医学を教えられるのは、医学部を出た教員ということになる。したがって新設医学部では最初、先発の医大から教員を受け入れるしかない。今春、新設された東北医科薬科大学は、東北大学から多くの教員を受け入れた。歴史がある医学部はその後も、後発医学部に次々と自校出身者を送り込むことで、系列が出来上がっていく。

 そういう意味で旧帝大系、そして私立では「御三家」が、広く影響力を持ち続けているのだ。

病院にも大学の影響

 そのような構図は、病院にもあてはまる。

 各大学病院には診療科ごとに、教授を頂点とした人事組織として「医局」がある。医師のほとんどは、医学部卒業後いずれかの医局に所属する。

 そして、大半の民間病院にとっては、医師の供給源は医局が頼りである。医局は、大学外に医局員を派遣するための病院を多く持っている。それらの病院はかつて、ドイツ語で座席という意味の「Sitz(ジッツ)」とも呼ばれ、狭義の「関連病院」とされた。病院に雇用されても、医局が医師の人事権を持っていることもあった。

 この仕組みは、病院にとっては医師の安定供給が得られ、医局においても医局員の雇用が確保されるという、持ちつ持たれつの関係があった。当然ながら、関連病院は、歴史のある大学のほうが多かった。

 ただ、そんな大学と病院のつながりも変わりつつある。2004年、医師免許取得後2年間の臨床研修が義務化されたのに合わせ、医師は全国どこの病院でも研修をすることができるようになった。このため、関連病院の定義も、関連を持つ病院といった緩やかな概念に変わってきている。

 とはいえ、今なお有力医学部がある地域を中心に関連病院が広がっていることに変わりはなく、互いに研修医を受け入れるなどの協力関係にある。(ジャーナリスト・塚崎朝子)

AERA 2016年10月3日号