K:その通りです。保険とは名ばかり。加入者の掛け金では足りず、自動車保険の損害賠償を、国民の税金で補てんしてバンバン出しているようなものです。カバーする領域も広すぎる。

 皆保険は、戦後間もない頃、蔓延(まんえん)していた結核やコレラなど感染症への対策を主として作られた仕組みです。当時は、希少な医療資源を全国公平に分配する意義も、税金を投入する意義もあった。経済成長を前提にした制度でもあります。

 現代は前提が違う。大部分を占めるのは高齢者の医療費で、健康保険加入者の保険料は、高齢者の慢性期の病気や延命治療に充てられている。

●本家麦飯、離れすき焼き

K:高齢になれば、健康面のリスクは上がる。そこに「保険」を適用すること自体に無理があるでしょう。さらに、通常は3割の自己負担が、後期高齢者では1割しかない。「本家が麦飯なのに、離れがすき焼きを食べている」状態です。

上:医療費が最もかさんでいるのは、高齢者の終末期医療、いわゆる延命治療であるという報告もあります。

K:延命措置も高額医療も受けるのは自由ですが、公的保険を充てるのはおかしい。民間保険や自己負担でカバーすべきです。皆保険を維持するには、給付と負担のバランスをどうするか、早急に議論すべきでしょう。

上:何かを保険から外すとなると、「命に差をつけるのか」とイデオロギーが持ち込まれ、問題をすり替えられてしまう。国民が問題の本質を認識できていないためでしょうね。

K:高齢者が少しの不調を訴えて来院したら、高額な医療機器で全身を検査して数百万円を計上して自己負担はごく少額、というシステムは、持続不可能です。皆保険がカバーする領域に条件を設けて狭め、自己負担や自由診療の領域を拡大するしかないと思います。

上:私も、免責事項と免責額を設定するしかないと考えます。まずは、命にかかわるところを優先する。心筋梗塞(こうそく)や脳卒中を公的負担にしても、過剰診療は起こりえないでしょう。その代わり、延命治療やQOLの疾患は削る。効果がよくわからない大部分の抗がん剤をカバーするのも、現実的でないと思います。

K:同意見です。命に関わる問題は重大ですが、シビアにいえば、人工透析のような慢性疾患を公的保険で負担するなら、さらなる工夫も必要でしょう。

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