「しかし、悲観してばかりいられません」

 仕事がないなら自分たちでつくろう。お金をつくるにはどうすればいいか。

●震災前より忙しい

 4月の下旬、面識のあった同じ本市内に住む2人の子どもがいるシングルマザーと再会し、雇用を生み出す方法を考えた。ネット上で出資を募る「クラウドファンディング」を利用し、天然素材の脱臭剤を開発・販売することを始めた。

「避難所内の臭いがきつい」という避難者の声がきっかけだった。ところが、出資額は目標を大きく下回り、200万円を見込んでいたのが33万円程度。仕入れ値などを差し引くと、メンバーに行き渡った報酬は微々たるもの。だが、これを機に、本格的なプロジェクトを立ち上げた。それが、熊本の女性のための「スーパーウーマンプロジェクト」だ。女性のスキルアップ支援や商品開発・販売などを柱にし、7月に法人化した。

 今回の地震で学んだことがあるとすれば、「やりたいことはすぐやる」。多くの人が亡くなった大震災を体験し、後悔しない人生を送ろうと強く思うようになった。

 女性のためのシェアハウスをつくる、学童保育所をつくる、海外に仕事の拠点をつくる、娘と世界一周をする……。こうした夢がたくさんある。この夢を、前倒しで進めていこうと本気で思い、一つひとつ実行に移していこうと考えている。

 今は二つの仕事を掛け持ちしているので、震災前より忙しい。けれど、毎日が楽しく、充実していると笑う。

「ホント、人生が加速している感じです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2016年9月5日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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