子どもに夢を託すあまりモンスターペアレンツ化した親がブラック部活の元凶に

出産と子育て

2016/06/29 11:30

「1970年代頃までは教師の言うことは絶対だった。ところが、80~90年代に親の学歴も高まり、教師と対等か、それ以上の立場で学校教育に物申すようになり、部活へも要望をぶつけるようになった。教師に専門性のある授業と違って、部活は親も意見しやすい。少子化もあり、わが子のためを思う親の意見は過熱していった」

●親の人生の敗者復活戦

 プロや五輪選手になれるのは一握り。それなのに、親たちはなぜそこまで「わが子の部活」に熱中してしまうのか。
 長男が高校球児だという都内在住の40代の会社員は言う。

「小学生の間は夢を追うが、中学、高校になるとわが子の現実がわかります。ただ、“もしかしたら”と希望を抱くのが親心でしょう。自分のことでもう夢は見られない。子どもが勝てばスカッとしますしね」

 わが子の部活が、親の人生の「敗者復活戦」になっているようにも映る。結果を求め感情的になった親が「部活モンペ(モンスターペアレンツ)」になるのかもしれない。

●わが子でなくチームを

 多くの教員が保護者の「部活熱」に悩むなか、広島県立安芸南高校サッカー部を率いる畑喜美夫さんは涼しい顔で言う。

「親御さんとのトラブルを抱えたことがありません」

 06年全国高校総合体育大会で前任校の県立広島観音高校サッカー部を日本一に押し上げた。この快挙は、畑さん独自の「ボトムアップ理論」によってもたらされた。著書『子どもが自ら考えて行動する力を引き出す 魔法のサッカーコーチング』にも詳しいが、平日の練習はたった2日。練習メニューや試合のメンバー決め、選手交代などは、すべて選手たちに率先してやらせる。顧問からのトップダウンで運営される従来の部活とは、真逆だ。

 畑さんによると、年度初めに入部してくる生徒の保護者に、以下のような「三つのお願い」をするという。

(1)勝った負けたで一喜一憂しない。負けたときは勝ったとき以上に成長するチャンス。
(2)「わが子」でなく「チーム」を応援する。
(3)子どもが苦しんでいるとき、すぐに手を差しのべない。子どもが自分で考えて解決する姿を見守る。

「教員が子どもとかかわれるのは学校とグラウンドだけ。一日の半分を過ごす家庭での時間はとても重要です。自ら考えて動く力をどう育むかを考えてほしい」(畑さん)

 部活動を子どもの成長の機会とするには、“親”の姿勢も問われることは間違いない。(ライター・島沢優子)

AERA  2016年7月4日号

1 2 3

あわせて読みたい

  • 教師も苦しむ「ブラック部活」 部活の“外部委託”の動き

    教師も苦しむ「ブラック部活」 部活の“外部委託”の動き

    AERA

    3/4

    保護者が教員からセクハラ被害 息子への「制裁」恐れて泣き寝入りも

    保護者が教員からセクハラ被害 息子への「制裁」恐れて泣き寝入りも

    AERA

    1/3

  • 部活に打ち込まないと「いじめられる」教員たち 他部の顧問から「陰口」「嫌がらせ」も

    部活に打ち込まないと「いじめられる」教員たち 他部の顧問から「陰口」「嫌がらせ」も

    AERA

    6/2

    やばい「ブラック部活動」 保護者「まともに休日がない」と悲鳴

    やばい「ブラック部活動」 保護者「まともに休日がない」と悲鳴

    週刊朝日

    5/10

  • “ブラック部活”のホワイト化、阻むのは親? 延長部活の実態も

    “ブラック部活”のホワイト化、阻むのは親? 延長部活の実態も

    AERA

    12/7

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す