20年大会も気候的には秋開催が理想なのだが、そうはいかない。国際オリンピック委員会(IOC)が、7月15日~8月31日におさまるよう、立候補都市に求めているからだ。

 IOCは五輪憲章で「選手の健康を守る施策を奨励、支援する」「スポーツを商業的に悪用することに反対」とうたっているが、実際には「憲章」に抵触している現実がある。

 最大の理由は、テレビの放送枠で人気プロスポーツとの争奪戦を避ける狙いがある。秋は欧州ならサッカー、米国は大リーグが佳境を迎え、アメリカンフットボールのNFLとも競合する。夏ならスポーツ界の「繁忙期」ではないため、放送枠を確保しやすい。逆に言えば、10月に五輪が開催されても、今のような天文学的な放送権料なんて払えない、という理屈である。

 それほど、テレビマネーの威光は絶大なのだ。IOCの繁栄を支える最大の収入源である放送権料は、10年バンクーバー冬季五輪と12年ロンドン五輪で計約39億ドル(約4690億円)。IOCは収入の9割を各国オリンピック委員会や各競技の国際連盟などに還元している。巨額の補助金を受け取る側からは異を唱えにくい。

AERA  2015年9月7日号より抜粋