摂食障害を患うAさんのなぐり書き。専門医の治療を受けているが、5年も苦しんでいる(撮影/写真部・岸本絢)
摂食障害を患うAさんのなぐり書き。専門医の治療を受けているが、5年も苦しんでいる(撮影/写真部・岸本絢)

 肥満は万病のもとだが、やせすぎにも落とし穴がある。不要なダイエットは、摂食障害だけでなく母胎に影響も。

 箸を使う時間すら、もったいないと思った。食べたい、もっと食べたい…。衝動に震えた。

 数年前のある夜のこと。大学生だった女性Aさん(25)は、自身のベッドに炊飯器を置き、3合の白米を手づかみで口に放り込んだ。この猛烈な食欲こそ、「拒食」の恐るべき反動である。

 好きな男性に振り向いてほしい──。ダイエットの始まりは、いたって普通の動機だった。数キロ落とすと、彼がほめてくれた。もっとやせれば、振り向いてもらえるかも。こうして、彼女はダイエットの魔力に取りつかれていく。

 朝は紅茶1杯、昼は弁当をつまんで、夜は豆乳だけ。ジムに通い、ひたすら走った。みるみるやせ、体脂肪率が20%を切ったところで生理が止まる。これは摂食障害の「拒食」の症状。体はSOSを発していたが、本人は体重を制御できる自分に酔いしれていた。57キロあった体重は1年半で34キロに落ちた。

 苦しいのは、ここからだった。ある日を境に、抑え込んできた食欲が暴発する。体が脂肪と糖を求め、菓子パンを一気に15個食べた日もあった。

「あんなに頑張ってやせたのに」

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