家畜の糞を利用してつくった住宅に暮らすモンゴルの遊牧民には、アレルギーの子どもがほとんどいないという。犬は、散歩時にほかの犬の糞便やばい菌を足や被毛につけて持ち帰ることが多いため、先進国では室内飼育が多いよりも、子どものアレルギーの発症率を下げるのに効果があるとみられている。

 ただし、犬を飼っていることと子どものアレルギー発症リスク低下との因果関係がはっきりしているわけではない。

「アレルギーの発症予防を目的として、ばい菌との接触を乳児にさせることは、全く勧めません。感染症の危険があるからです」と松本部長は指摘する。

「太陽の光を浴びてビタミンDが体内に生成されたり、運動したりすることでも、生体内の免疫応答性は変化すると考えられています。犬と暮らす子どものアレルギーの発症リスクの低下には、犬と一緒に散歩に出かけて日光浴や運動ができるなど、ばい菌との接触だけでなく、さまざまな環境要因が絡んでいると考えられています」

 日本では散歩後に犬の足裏を拭いて家に上げることが多いのに対し、欧米では自宅で人は靴を履いたまま、犬も「土足」で暮らす。そうした生活習慣の違い、食生活による腸内細菌叢(そう)の違い、人種の違いなどから、欧米の研究結果が当てはまらない可能性もあるという。

「特定の動物アレルギーの家族歴があるなら、のちに飼育放棄される不幸なペットを減らすためにも、ペットは飼わないほうが賢明でしょう」(松本部長)

AERA  2015年7月13日号より抜粋