「完璧にしゃべろうとか、間違えてバカにされたくないといったプライドが、コミュニケーションを妨げている。日本人は周囲、特に周りの日本人にどう思われるかを気にしすぎです」

 そう話す近藤氏は、6年前に「社長塾」を始めた。1回1時間、とにかく英語をしゃべり、自信をつける。

「きれいな英語を使いたい気持ちはありますし、そのために努力もしています。でも、例えば海外からの電話に対しては、言い間違いを恐れず相手の用件がわかるまで確認し、最適な人にきちんとつなぐといった、目的を果たすことが大事だと考えるようになりました」(入社11年目の江田弥生さん)

 コピー機などを多くの国々で製造・販売しているリコーも、社員の英語運用力向上では、メンタル部分の強化が必要と感じている企業の一つだ。

「TOEIC700点でも仕事で英語を使えない、800点でも出張で話せない、といった話が、あちこちから聞こえてきた」(加藤直子・人材開発部長)

 そこで同社は昨年から、場面を設定して英語で発信する研修を増やしている。交渉、プレゼン、テレビ会議、電話、メール…。それらを疑似体験させることで、実際の場面での緊張を和らげ、英語が口をつきやすくすることを狙っている。社員同士が数人単位のグループを作って、英語学習に費やした時間を競い、上位には電子書籍リーダーなどの賞品が贈られる。

AERA 2014年8月25日号より抜粋