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「伝統にあぐら」レスリング五輪除外の危機の裏側

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記者会見する福田富昭・日本レスリング協会会長(中央)。右はロンドン五輪メダリストの米満達弘。協会に挽回策はあるか (c)朝日新聞社 

記者会見する福田富昭・日本レスリング協会会長(中央)。右はロンドン五輪メダリストの米満達弘。協会に挽回策はあるか (c)朝日新聞社 

 野球、ソフトボールに続き、東京が招致を目指す2020年五輪からレスリングも除外の危機に瀕している。

 国際オリンピック委員会(IOC)は2月12日朝から、非公開の理事会を開いていた。焦点の議題は、2020年夏季五輪の「中核競技」から何を外すか。ロンドン五輪で実施された26競技から、一つだけ除外することが決まっていた。

「落ちるのは近代5種だ。ロゲが11年越しの悲願を果たす」

 重鎮の一人、英国人ジャーナリストのデービッド・ミラーは、そう予想した。他の記者たちもほぼ同じ意見だった。

 フアン・アントニオ・サマランチ前会長のあとを引き継ぎ、01年夏にIOCのトップに就任したジャック・ロゲ会長は、五輪の肥大化に歯止めをかけて活性化を図るため、競技の新陳代謝を図ることを掲げた。02年に野球、ソフトボール、近代5種の除外をIOCのプログラム委員会が提案し、05年の総会で野球、ソフトボールを外した。初志貫徹の最後のターゲットが近代5種、のはずだった。

 雲行きが一変したのは、正午からのIOCの記者会見が始まる直前だった。AP通信が「レスリングを除外へ」と世界に打電した。ほどなく、マーク・アダムスIOC広報部長が会見し、中核競技に選んだ25競技を読み上げ、最後にレスリングが外れたことを付け加えた。

 歴史ある競技が、なぜ瀬戸際に追い込まれたのか。

 AP通信が独自に入手したという報告書によると、IOCプログラム委員会が評価基準として示した「国際性」「普及・振興」「歴史・伝統」など39項目のうち、ロンドン五輪でのテレビ視聴者数などの「人気」や「組織運営」で評価が低かったのが足を引っ張ったという。

 除外候補の筆頭だった近代5種は危機感が強かった。故サマランチ会長の息子、サマランチ・ジュニア理事は国際近代5種連合の副会長。彼を中心としたロビー活動に加え、競技日程の短縮など、長年、努力を重ねてきた。「伝統」にあぐらをかき、危機感が薄かったレスリングとの差は明白だった。

 ロゲ会長は13日の会見で、「レスリングはまだ除外が決まったわけではない」と強調した。5月にロシアで開かれる理事会で、レスリングに加え、新規・復活採用候補である野球・ソフトボール、空手、武術、スカッシュなど計8競技が一つ、もしくは複数に絞り込まれる。

 だが最終的に審判が下る9月のブエノスアイレス総会で復活の可能性があるのは、最大で1競技のみ。「ゼロ」の可能性もあり、情勢は厳しい。

AERA 2013年2月25日号


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