1月号
作家 市川 拓司 Ichikawa Takuji
「避難民」の物語

2015/01/22 16:49

 昨年の頭にフランスで『いま、会いにゆきます』のペーパーバックと『そのときは彼によろしく』の単行本がほぼ同時に刊行されることになって、あちらの出版社からプロモーションに来てもらえないか? という打診があったんですね。ぼくはこの小説の「寛太」同様、乗り物すべてに対して恐怖症を持っているので、かなりのためらいはあったんですが、それでも、とりあえずは「伺います」と返答しました。でも、いよいよその日が近づいてくると、やっぱりどうにも飛行機には乗れそうになくて、そのことを考えるだけでパニックになってしまい、結局は土壇場で断ってしまいました。一番落胆したのは同行することになっていたぼくの奥さんです。パリに行ける! ってものすごく楽しみにしていたのに、明確な理由(ぼくにとっては明確ですが)もないままにキャンセルですから。ぼくはいつだってこんな調子です。結婚して30年近く経ちますが、関東から出たことなんてほとんどない。旅行にも映画にもコンサートにも行けず、ひととの集まりにもほとんど顔を出さない。そうしていてさえ心や体を乱さずにいることはとても難しい。

あわせて読みたい

  • 6月号作家 市川拓司 Ichikawa Takuji「障害」を進化的戦略と考える

    6月号作家 市川拓司 Ichikawa Takuji「障害」を進化的戦略と考える

    6/15

    「日本では放送しない」約束で海外メディアに… 被爆者たちはなぜ日本で原爆を語れないのか?

    「日本では放送しない」約束で海外メディアに… 被爆者たちはなぜ日本で原爆を語れないのか?

    AERA

    8/6

  • 沢木耕太郎『春に散る』年配女性に異例の反響となった理由

    沢木耕太郎『春に散る』年配女性に異例の反響となった理由

    週刊朝日

    1/29

    発達障害の作家・市川拓司さんが語る「『違い』は武器になる」

    発達障害の作家・市川拓司さんが語る「『違い』は武器になる」

    AERA

    6/13

  • 作家・高橋源一郎が見つめてきた、3.11以降の日本社会と民主主義

    作家・高橋源一郎が見つめてきた、3.11以降の日本社会と民主主義

    dot.

    7/12

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す