与謝野晶子著『きんぎょのおつかい』から得た意外性は絵本作りのヒントになる------アノヒトの読書遍歴:室井滋さん(後編) 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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与謝野晶子著『きんぎょのおつかい』から得た意外性は絵本作りのヒントになる------アノヒトの読書遍歴:室井滋さん(後編)

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(写真:BOOKSTAND)

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女優、エッセイストとして活動する室井滋さん。今年7月には、てぬぐいあそび絵本『ピトトトトンよ〜』(世界文化社)を上梓し、9月には絵本『すきま地蔵』(白泉社)の新刊絵本を発刊する予定です。室井さんは、学生時代は村上春樹作品をよく読んでいたそうで、最近で印象に残った作品は、和田誠さんの著書『ねこのシジミ』だといいます。そんな室井さんに前回に引き続いて日頃の読書の生活についてお伺いしました。


------室井さんが絵本を描くうえで、影響を受けた作品は何かありますか?

「『きんぎょのおつかい』という与謝野晶子著の古い古い童話。たくさんの童話が昔から語り継がれてあったり、本になったりするわけですけれども、童話の中には、例えば詩人の室生犀星さんが書かれた童話だったり、画家の竹久夢二さんが書かれた童話だったり、『赤毛のアン』翻訳家の村岡花子さんが書かれた童話だったりと、別ジャンルの方の童話が案外あったりするもんなんですね。そんななかで見つけたのがこの作品なんです」


------具体的にはどんなお話でしょうか。

「金魚が家の人の代わりにおつかいに行くというお話です。おつかいには3匹で行くんですけど、金魚なので本当だったら水の中じゃなきゃ生活できないわけで、電車に乗っていたら突然『死んじゃう』『お水お願いします』とか言って急に騒ぎ出して、金盥(かなだらい)を持ってきてもらって中へ入ってホッとするという件とかがあるんです。おつかいは無事に行けて、そこでまたいろんなものを持っていくんですけど、金魚なので手で持てないっていう、話のストーリーとしては辻褄があってないようなところがあります。でもちょっとおかしくて。何これっていうような、お茶目な、金魚がおつかいに行くっていう発想が優れていたのかなって思えるんですけども、私も絵本を書いているので、こんな話が書けないかなと思って読んでいます」


------どんなところに共感を持ちましたか?

「やっぱり意外性。日常から離れたところでそういう発想がないと童話ってちょっと面白くないっていうか。子どもたちはもちろん、大人が読んでも面白いとなると、例えば、今目の前にあるこのマイクが夜になったら動き出す、みたいな話もいいなとか思えたりもするんですが、これをどういうふうに......。擬人化してもいいし、擬人化しなくてもいいんですけど、何をどういうふうに動かすか、何がどういうふうに動くかということに対して、普段からそういう目で世の中を見ていないとなかなかそういう発想って出てこないと思うんですね。金魚を主役にしようとする発想があっても、金魚が電車に乗っておつかいに行くって発想はなかなかないじゃないですか。そのへんがさすが与謝野晶子さんって思える訳ですよ」


------そういった観点が絵本を描くうえでヒントになるというわけですね。ほかに影響を受けた本があればぜひご紹介ください!

「小松左京さん原作『日本沈没』のコミック版も非常に印象に残りました。全3巻で、大変読みやすくはなっているんですが、絵が描かれている分、迫力もすごいことになっていまして。最初に読んだときにあまりの恐ろしさに、私たちの国もこんなふうになっちゃったらどうしようって一抹の不安が残って、でも枕元にずっと置いている本なんです」


------恐ろしい内容が書かれている本。

「ええ、ご存知のように、2013年11月20日、西乃島という小笠原諸島にある島が噴火しました。私、ちょうどドラマの撮影で甲府に行っているときにニュース番組で見たんですが『一晩で島ができました』という報道だったものですから、もうぎょっとなっちゃって。何故かというと、このコミックの冒頭シーンでは、一晩で島が沈むんですね。それから日本列島がえらいことになっていくんですが、そのきっかけの大事件となった場所と、実際の西乃島がある場所がまったく一緒なんですね。それを読んだときに『ああ大変』と思ってもう一回読み直したんです」


------西ノ島の噴火はまだ記憶に新しいですね。 

「それ以外にも、阿蘇山あたりのことが書いてあったりとか、割とこう私たちが心配していることがそのままに出てくるので、著者の小松先生はさすがで、相当に研究なさって調べ抜いて。地震というのはとても周期性のあるものなので過去にさかのぼって研究されて、それでこの本を書かれたんだなと思うんですね。私自身すごく怖がりで、もし明日東京で何かあったらどうしようとか、いろんなことを思ってしまうんですけど、転ばぬ先の杖じゃないですけど、そうはいっても自然の起こすことなので、コミックとか小説の中のお話ではなくて、これはもしかしたら現実に起こるかもしれないということで受け止めてもらった方がいいんじゃないかなと。自分自身も気を付けるんですが、何に気を付けたらいいのかとか、そういうことを振り返る意味でもぜひこれを一度手にしていただけたらなと思います」


------室井滋さん、ありがとうございました!



<プロフィール>

室井滋 むろいしげる/富山県出身。女優。映画「居酒屋ゆうれい」「のど自慢」「OUT」「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」などで数多くの映画賞を受賞。2012年日本喜劇人大賞特別賞、2015年松尾芸能賞テレビ部門優秀賞を受賞。また、近刊に『おばさんの金棒』(毎日新聞出版) 、絵本『しげちゃん』シリーズなど著書多数。絵本『いとしの毛玉ちゃん』(金の星社)に連動したCD「8つの宝箱〜いとしの毛玉ちゃん〜」(日本コロムビア)を同時発売。文春文庫の著書10作品や、マガジンハウスより著書『ドレスよりハウス』『マーキングブルース』が電子書籍化。7月に、てぬぐいあそび絵本『ピトトトトンよ〜』(世界文化社)、9月に絵本『すきま地蔵』(白泉社)の新刊絵本を発刊予定。


(記事提供:BOOK STAND)

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