日々さまざまな工夫がなされる美術館の舞台裏事情。



 美術館事情最前線としては、ここ数十年で欧米の美術館は資金繰りに苦しむようになり、美術品貸与のビジネス化は一層激化。アジア・オセアニア・中東・中南米など各国の美術館が、急激な経済の成長と共に、文化の発展も促すため、欧米の美術館から有名作品を借り、自国での美術展開催に力を注ぐ動きが見受けられるのだそうです。



 そうしたなか、現在もっとも幅を利かせているのは、中国だと高橋さんは指摘。中国では、欧米から有名作品を借りる代償として、ビジネス的成功のための契約を締結するなど、美術品は政治的駆け引きに用いられているのだといいます。



「ヨーロッパの国々には、中国に美術品を貸すことによって、政治的・金銭的になんらかの利益を引きだそうという目論見も見え隠れします」(本書より)



 また美術マーケットにおいても、羽振りがいいのは中国人。彼らは、オールド・マスターや印象派絵画よりも、自国の古美術品やコンテンポラリー・アートを購入する傾向にあるため、中国の美術品の価格は高騰しているのだそうです。



 美術館や展覧会の運営にまつわる、一筋縄にはいかないさまざまな事情。美術館でひとつの展覧会が開催される裏では、いったい何が行われているのか、知られざる世界を覗いてみませんか?