「ストロベリーナイト」などいわゆる姫川玲子シリーズでは累計300万部を突破、さらに連続ドラマ化された「ヒトリシズカ」などヒット作や話題作を次々と世に送り出してきた小説家・誉田哲也さん。デビュー以来、伝奇小説、ホラー小説、推理小説、青春小説、と多彩な作風で、多くの読者を魅了しています。



 そんな誉田さんの最新作『ケモノの城』がいよいよ発売となります。帯には「今年最大の問題作」と太字で刻まれており、読む前から胸のざわめきが止まりません。



 物語は、ある街で起きた監禁事件を舞台に、二つの視点で描かれています。



 ひとつは、愛する恋人と甘い同棲生活をしていた29歳の男性の視点。彼らが暮らす愛の巣に、ある日恋人の父親が転がり込み、居候をすることに。しかし、その父親は仕事もせず、また居候をしている理由はもちろん、多くを語りません。徐々に男性は彼女の父親を不信に思うようになり、尾行をしたところ、ある奇妙な光景を目撃することになります......。

 

 一方、もうひとつの視点は件の監禁事件を担当する男性刑事のもの。ある17歳の少女が警察に保護を求めてきますが、彼女の証言に刑事は翻弄されるばかり。そんな中、少女が生活していたマンションの浴室から大量の血痕が発見されます。やがて同じ部屋で暮らしていた別の女も保護されますが、少女とその女の証言内容には食い違いが......。



 読み進むにつれ、この二つの視点で描かれた物語が、少しずつ重なりあっていきます。そして恐ろしい事件の真相が明らかに......。



 人が人を支配する監禁事件。現実の世界でも、2002年に発覚した「北九州監禁殺人事件」や、最近では2012年の「尼崎事件」といった大事件がありました。いずれも主犯格の人物が、監禁した複数の人間を執拗に虐待することによってマインドコントロール下に置き、同時に被害者同士を虐待させることで相互不信を起こさせ、自らの手を下すことなく順番に人間を殺害、処理していくという非常に残忍なものでした。

 

 通常の精神状態を失った人間が「ケモノ」となり、次々と殺人を行う......。本作はそんな事件を彷彿とさせ、人間の深い闇を圧倒的な描写力で炙り出しています。

小説だからこそ、いや小説でしか描けない"現実"を見せてくれる本作は、まさに「問題作」という形容がピッタリの作品といえそうです。