8月10日に公開された映画「少年H」。1997年に発売された原作小説は上下巻で340万部のベストセラーとなり、英語、台湾語、韓国語、中国語に翻訳されました。



 『少年H』は、舞台芸術家の妹尾河童氏が、自らの家族と戦争に翻弄される人々を描いた自伝的小説です。異国情緒にあふれる神戸の海辺の街で生まれた少年「H」。父・盛夫に現実を見つめることの重要さを教えられた「H」は、戦火がせまる神戸で毎日を懸命に生きていきます。



 盛夫役で主演を果たした水谷豊氏は、出演を決めた理由が作中の少年Hの「言葉」にあると語っています。



「戦争に負けたのが悔しくて涙が流れたのではなかった。『この戦争は、いったいなんだったんや!』と思うと、たまらなかったのだ」(『少年H』【上】下巻より)



 水谷氏は、なぜこの一行が心に残ったのでしょうか。その理由を、「新潮文庫の100冊」ホームページ上の「ワタシの一行」で語っています。



「理不尽な戦争に対する少年Hのこの言葉は、ぼくの心にやりきれなく突き刺さった。そして、そんなHを見守る父親の姿は、同じ子供を持つ親としても強くぼくの心をゆさぶった。悲惨な戦争を健気に生き抜いた一家の姿は、ぼくに大きな感動を与えてくれた。この原作を読み、ぜひともこの映画に出演し、Hの父親を演じたいと思った」(水谷豊)



 都内で行われた「少年H」の初日舞台挨拶で、妹尾河童氏に「お父ちゃんがよかった」と絶賛された水谷氏。原作者自身に讃えられ、役者冥利に尽きる瞬間となったことでしょう。



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水谷豊が選んだ「ワタシの一行」

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